少女とおじさん




「うぅ・・・・・・・・・」
雛山理緒は俯きながら歩いていた。
少し前に放送があった。その中には彼女と同じ学校の生徒が一人いたのだ。
それに、昼間の子も、なんという名前の子なのかは分からないが、間違いなく放送で呼ばれただろう。

昼間の出来事の後、理緒は目の前で横たわる少女の分も頑張って生き残ろうと決心し、
少女の荷物、襲撃者が持っていた鋏を回収して、すぐにその場を離れていた。
しかし、最初は意気込んでみたものの、
理緒はこれからどうしたらいいか、全く思い浮かばなかった。
結局彼女に出来る事はアテも無く歩き回る事だけだった。

その上、6時から始まった放送のせいで、彼女はまた落ち込んでしまったのである。
「わたし、どうしたらいいのぉ・・・・。」
うなだれる理緒。

そんな時、視界の端の森に、微かに人影が見えた。
「きゃーっ!だだだ、誰!?」
錯乱しながら鋏を振り回して威嚇する理緒。

「落ち着け、僕は敵じゃない!!」
トンカチを地面に捨て、両手を上に挙げながら、橘敬介が姿を現した。
「・・・僕は人を探してるだけなんだ。戦う気は無い。」

現れた男の落ち着いた物腰、なだめるような口調。
おかげで理緒は、落ち着きを取り戻していた。
「・・・・・・人、ですか?」

理緒と敬介はお互いの情報や目的などを簡潔に話し合った。

「今あなたが言ったような特徴の人は、見ませんでした」
「そうか、君は観鈴や晴子を見ていないんだね・・・・・・。」
「すいません・・・・・。」


敬介は軽く俯いていたが、すぐに顔を上げた。
「いや、謝らなくていいよ。君も大変だったんだしね。」
「ええ・・・。それに今もこの島では、殺し合いが起きてるかもしれないんですよね・・・。」
「ああ・・・、手遅れになる前に急がないと!」
そう言うと、敬介はトンカチを拾い、立ち去ろうとした。
その背中を見送ろうとしていた理緒。

しかし、
「あの・・・、待って下さい!!」
意を決して声をかける。

「なんだい?」
「わわ、私も、連れて行ってくれませんか?」
「駄目だ・・・、僕はゲームに生き残るより観鈴と晴子の捜索を優先するつもりなんだ。
危険すぎる。他の人を巻き込むわけにはいかないよ・・・。」
敬介は険しい表情で、はっきりと、そう告げた。

しかし理緒も引き下がらない。
「でもでもでも、私、これからどうしたら良いのか分からないんです・・・・。
ですから、危険でもいいから連れて行ってください!」
「・・・・・・・・・・・・。」
「お願い、します・・・。」



泣きそうになりながらも、言葉を続ける理緒。
その勢いに負けたのか。敬介は険しくなっていた表情を緩め、
「・・・・分かったよ。」
微笑みながら、そう口にした。
「本当ですか!?」
理緒は表情を輝かせている。

「ああ。僕は橘敬介って言うんだ、よろしく頼むね。」
「私、雛山理緒っていいます。よろしくお願いします!」
「うん、それじゃ理緒ちゃん、そろそろ行こう。重いだろうし、荷物を一つ持つよ?」
「はい、敬介さん!」
こうして、二人は一緒に平瀬村に向かって歩き出した。




【時間:1日目午後6時30分】
【場所:I-5】
雛山理緒
【持ち物:鋏、アヒル隊長(17時間半後に爆発)、支給品一式】
【状態:普通。アヒル隊長の爆弾については知らない】

橘敬介
【持ち物:トンカチ、繭の支給品一式(中身は開けていない、少し重い)】
【状況:観鈴と晴子を探す、自分の支給品一式(花火セットはこの中)は美汐のところへ放置】
-


BACK