オッス、オラ高槻! 今も宙ぶらりんで頭に血が上りそうだけどオラ何だかワクワクしてきたぞ! …んなわけねぇだろうが。畜生、早くここから下ろしてもらいてぇ。俺様は何度も説得を試みたのだが銃口を向けられるわ貼り手されるわ兄ちゃんは助けてくれねえわでホトホト困り申した。 「…ありがとね。それじゃ、あたしはもう行くから。あなたの荷物は返しておくわ」 ちっこい嬢ちゃんは兄ちゃんのバッグをはにかみながら返した。バッグに俺の食料を詰めこみながら…ってオイ! 「ちょ、俺様の食料入れんなよ! この、泥棒猫がァ!」 「何よ、最低男。捕虜なんだから当然のことでしょ」 「悪いな。泥棒なら俺の得意技だ。こう見えても俺は過去に人様の牛乳を盗んだ事がある」 俺様の直訴はただちに取り下げられた。いつの時代もこんなものである。 「それと、この人はどうするの? まだ気絶してるけど」 「このまましょって行くさ。ここまで連れてきたんだ。今更放っておくわけにもいかないからな」 兄ちゃんはそう言うと、ひょいっと担ぎ上げ、悠然とその場から去っていった。 ああ、結局俺を助けてくれなかった。そういや、あの畜生もどこにもいねぇし…俺って、犬にまで見捨てられたのか? そんな俺の思いを他所に、ちっこい嬢ちゃんも荷物の整理を始める。…俺もそろそろ何とかしないとヤバい。 「なぁ嬢ちゃん。いい加減ここから下ろしてくれねぇか? このままだとマジでカッコ悪いんだが」 「イヤよ。アンタ、どうせ下ろしても荷物盗って逃げるでしょ」 図星だった。ってか、もう殺し合いなんぞどうでもいいんだがな。支給品が犬だったし。 「ま、誰かお人好しが来てくれることを祈るのね。あたしはその前に誰かに撃ち殺される事を祈ってるけど」 べーっ、と舌を出して毒を吐く嬢ちゃん。くそ、いつか犯しちゃる、このアマ。いや、口には出さないけどな。撃ち殺されたくはないからな。 「それじゃあね。もう二度と会う事はないでしょうけど」 嫌味ったらしく言うと、そのままここを去っていった。 …どうして俺ってこんな役回りなんだよ。支給品は犬だし、このままじゃズガンで情けない死に方だし…泣くぞ。 本気で泣こうかと思っていると、頭上から聞き覚えのある声が聞こえた。 「ぴこっ!」 こ、この声は! まさか、まさか奴は俺を見放さなかったのかっ! 「ポテト、その声はポテトなんだな! ハハハハ! やっぱお前だけは俺の味方だ!」 「ぴこぴこ、ぴこ」 「オーケイオーケイ、もちろん連れてってやるさ! だから早く下ろしやがれコンチキショー!」 体をぶらぶら揺らしながら畜生との交渉を開始する俺。情けない構図だが、こうするしかない。 「ぴっこり」 納得した(らしい)ポテトが器用に降りてきてロープを噛み切る。ブツッ、とロープが切れて俺はまっ逆さまに転落する。 「ぐおっ!…くくくっ、だが俺はこれで自由の身だ。もうこんな扱いとはオサラバだっ!」 手を高々と上げて勝利の雄叫びを上げる。俺の肩にはいつのまにかポテトがいたが、気にしない。俺様は今気分がいいんだ。 荷物は全てなくなってしまった。しかしここでへこたれないのが一流の悪だ。そう、おれは悪役。腐っても悪役なのだ。 「まずはメシだな。その後は…なるようになれだ」 他人と群れるのは俺の好みじゃねえ。俺は俺なりのやり方で脱出口を探すさ。 他人がどうなろうと関係無い。主催者に踊らされんのも好きじゃねえ。俺様が生き残れりゃそれでいいんだ。俺様は一流の悪、だからな。 国崎往人 【所持品:トカレフ TT30の弾倉(×2)ラーメンセット(レトルト)化粧品ポーチ 支給品一式】 【状態:普通】 観月マナ(102) 【所持品:ワルサー P38・支給品一式】 【状態:普通】 月島拓也 【所持品:支給品一式(往人持ち)】 【状態:気絶中】 高槻 【所持品:ポテト、食料以外の支給品一式】 【状態:健康。一人で脱出口を探す。ゲームには興味なし】 【場所:F-7西】 【時間:一日目18:45頃】 - BACK