漫才コンビ再会




折原浩平は鎌石村の探索を開始していた。
まずは爆発音のした方面から調べてみた。
「………これは酷いな…。」
現場には、夥しい血痕。死体こそ残っていた無かったが、誰かが死んだのは明らかである。
しかし、放送時に長森や住井の名前は無かった。少なくとも、彼らではないだろう。

そう考え、浩平は爆発地点の探索は切り上げ、付近の民家や施設を徘徊する事にした。
すぐ近くにあった民家を探索してみたが、役立ちそうな物は包丁程度しかなかった。
「まあ、だんごよりは100倍役に立つけどな。」
と、独り言を呟きつつ、包丁は貰っていく事にしたが。

次に消防分署を調べてみる事にした。
躊躇せずにドアを開ける…………。
「動かないで!!」
声と同時に、こめかみに銃が突きつけられる。
「え、折原なの…?」
両手を上に挙げ、戦う意思が無い事をアピールする浩平の目に映ったのは………。
級友、七瀬留美の姿であった。
二人して、まじまじとお互いを観察しながら固まっている。
このまま固まっていても仕方ないので、気さくに声を掛けてみる事にした。

「よう、久しぶりだな。」
「折原……、折原ぁ…!!」
七瀬が、抱きつこうと飛び掛ってくる。
それを華麗なサイドステップで、ギリギリのところでかわす。

ゴーンッ!!
七瀬が派手に壁に激突する。
かなり、痛そうだ。
七瀬は壁にへばりついたまま、ワナワナと震えている。



「おい、大丈夫か……?」
仕方が無いので、声を掛けてやる。

「避けるな、アホォ!!」
七瀬は即座に振り返り、強烈なツッコミを返してくる。
その鼻は壁にぶつかったせいか、真っ赤になっている。

「おー、これで確信した。間違いない。お前は七瀬留美だ。」
「そんなの当たり前じゃない!気付くのが遅いわよっ………!」
さすがは本家・七瀬だ。ツッコミはお手のものである。
しかし、何故かいつものような覇気が感じられない。
どこか、落ち込んでる節がある。勿論自分も繭の死で落ち込んではいるのだが、七瀬はその比では無さそうだ。
いつものノリで冗談を続けるのはマズい。

「どうかしたのか……?心なしか、落ち込んでいるように見えるぞ。」
「…………。実はね…………。」


七瀬と、情報交換をしあった。伝えた事は、俺が見てきた事や、これからの俺の目的。
分かった事は、七瀬は長森や住井は見ていない事。傍に倒れている冬弥という男は非常に危険な状態にある事。
そして俺も七瀬も、繭を殺した奴やゲームの主催者は許せないという事だった。
「そうか…………。大変だったんだな…………。」
「うん…………。」
「まあ、とにかくお前と会えて良かったよ。お前以上に信用出来る奴は、そうそういないからな。」
「折原ぁ…………。」
……しまった。
七瀬は嬉しそうにこちらを見ている。
はっきり言って、相当恥ずかしいぞ。




「お前なら、どんな強敵が来ても、その身一つで撃退してくれそうだからな。」
照れ隠しにそう言うと、
「んなもん出来るかぁっ!どアホッ!!」
強烈な拳が、俺の頬にめり込んでいた。


「アイタタタ…………。」
「ねえ、折原」
「ん、なんだ?」
頬を抑えつつ、返答する。
「これからどうすれば良いのかな……?」
「とにかく、俺は長森と住井を探そうと思う。それはさっきも言っただろ?」
「うん………、それはそうなんだけど、藤井さんが心配だよ…………。」
七瀬は目を潤わせながら、そう呟いてきた。


……ああ、俺は面倒ごとに首を突っ込もうとしている。

言ってやればいいんだよ、他人なんて放っておけって。
どうせ、その様子だと放送の結果を聞けば錯乱してマーダーになるに決まってるんだ。
島に来る以前は他人だった俺達が世話を焼いてやる話じゃない。
それよりも、俺達には守るべきものがあるはずだろ。
理性ではそう思っていたが、七瀬の悲しそうな表情を見た浩平は、理性とは別の言葉を口にしていた。

「……取り敢えず、そいつは俺がかつぐから一緒に連れて行こう。起きた後どうするかは、そいつが決める事だ。」

こうして俺は、見知らぬ男を背負ったままの移動を余儀なくされる事になった。




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 【時間:1日目、19:30】
 【場所:c-5】

七瀬留美
 【所持品:P−90(残弾50)、H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、ノートパソコン、七瀬と冬弥の支給品一式】
 【状態:不安、浩平と一緒に次の村(平瀬村)に向かって移動】
 
折原浩平
 【所持品:だんご大家族(残り100人)、日本酒(残りおよそ3分の2)、包丁、ほか支給品一式】
 【状態:健康。長森と住井を探す。冬弥をかついでいるので、移動速度はかなり遅い】

藤井冬弥
 【持ち物:無し】
 【状況:気絶中、放送は聞いておらず由綺の死は知らない】
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