死と少女たち




あの後。友人・知人、そしてゲームに乗っていない他の参加者を探すため、久寿川ささらたち4人(正しくは3人と1体?)は鎌石村から別の場所へと移動していた。

「あの……本当にわたしはなにも持たなくてよろしいのでしょうか?」
両手で重そうに自分のバッグを持ち、腰には日本刀をさして歩いている真琴にゆめみが心配そうに尋ねた。
「だ…大丈夫よ。これくらい……」
家を出る際、真琴は食料やら使えそうなものを手当たり次第いろいろとバッグにぶちこんできたのだ。そのため重くなってしまったのである。

「……で。これからどこへ行くの?」
「そうね…無学寺。まずはここを目指しましょうか?」
ささらは地図の一点を指差すと尋ねてきた真琴に答えた。

「ここなら私たちの足でも今日中に着けると思うし」
「そうネ。それに雨風もしのげるかも…………ン?」
「どうかなさいましたか、レミィさん?」
「ミンナ……なんか臭わナイ?」
「臭う?」
レミィがそう言ったので、ささらたちも周辺の空気の匂いを嗅いでみた。
――かすかに妙な臭いがした。

「なんなのこの臭い?」
「これは――血の臭いでしょうか? それとも……死臭……」
「死臭!? それってまさか………」
「たぶんこっちからネ!」
「あ…ちょっと!」
臭いのもとがあると思える場所へとレミィが走りだし、ささらたちもそれに続いた。





―――先程の場所からは歩けば数分もかからないであろう場所にソレはあった。
臭いの元――それは、この殺人ゲームがスタートしたばかりの序盤に運悪く命を落とした河島はるか(027)の亡骸であった。

「………」
島に来てはじめて間近で見る『死』というものに、ささらたちはしばらくの間言葉が出なかった。

その沈黙を破ったのは真琴のある一言だった。

「お墓……」
「え?」
「お墓作ってあげよう……さすがにこのままじゃこの人も可哀想だよ」
そう言うと真琴は自分のバッグからスコップを取出し穴を掘りはじめた。

「―――そうね。私たちにできることはそれくらいしかないけど………」
「イエス。マコトの言うとおり、このまま何もしてあげないのは可哀想ネ」
「お手伝いします。真琴さん」
それからしばらくの間、真琴、ささら、レミィ、ゆめみ、そしてまた真琴……といった順に交替で穴を掘り、穴を掘る役以外の3人で墓にそえる花などを集めた。

やがて人ひとりは軽く入るであろうサイズの穴を掘り終えると、4人はそこにはるかの亡骸をそっと埋葬し冥福を祈った。

「ごめんね。私たちこれくらいしかできないけど…」
「どうか安らかに……」
「それと……あなたの荷物、悪いかもしれないけど持っていくわね……」
「大事に使わせてもらうヨ……」
レミィの手には、はるかのの支給品が一式入ったバックがあった。はるかの亡骸の近くにそのまま放置されていたものだ。



「それじゃあ…私たちはこれで……」
「あなたの分まで長生きしてみせるから」
「バイバイ…」
「名前はわかりませんでしたが……あなたのことは忘れません………」

こうして4人は今一度生き残る決意を胸にその場を後にした。
4人が去った後、そこにははるかの墓とそえられた何輪かの花だけがあった。

風が吹き、花が4人に手を振るように左右に揺れていた。


その後、ささらたちが定期放送を聞いたのは、それからまた少し歩いていた時のことである。




 【場所:D−07(ただし、ささらたちはすでに無学寺を目指して別エリアに移動している)】
 【時間:午後6時過ぎ】

 久寿川ささら
 【所持品:スイッチ(未だ詳細不明)、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 沢渡真琴
 【所持品:日本刀、スコップ、食料など家から持ってきたさまざまな品々、ほか支給品一式】
 【状態:健康】



 宮内レミィ
 【所持品:忍者セット(木遁の術用隠れ布以外)、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 ほしのゆめみ
 【所持品:支給品一式】
 【状態:健康】

 【備考】
・放置されていたはるかの荷物はバックごとレミィに。レミィの荷物はゆめみに渡る
・ささらたちは全員無学寺が爆発で吹っ飛んでることを知らない
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