爆発音を聞いた智代と茜は、枝や草をかき分けてようやく音の中心付近まで辿りついた。しかし、そこにあったものは爆発によって飛び散ったと思われる小石の類が残っているだけだった。 血痕なども見当たらないことから、恐らく死者は出なかったらしいが… 「…出遅れたということですか、智代」 「そのようだな…投げられた爆弾も、一個だけのようだ」 砂利の飛び散った地面をさすりながら、智代が状況を分析する。 「どうします? 鎌石村の方まで行きますか? それとも最初の予定通り平瀬村まで?」 「…そうだな、平瀬村の方へ行こう。どうやらここにいた奴らは皆うまく逃げおおせたようだからな」 「結果的に無駄足になってしまいましたね」 「いや、そうでもないぞ。こうして死人が出なかったことだけでも確認出来たのだからな」 「…あなたって、ポジティブ思考なんですね」 肩をすくめて、茜が笑う。 「そうでも思っていなければやってられないだろう…私だって女の子なんだぞ。本当なら、誰かに守ってもらいながら行動したいところなのだがな…というか、それがか弱い普通の女の子だというのに…」 ぶつぶつ言っている智代に、ぷっ、と吹き出す茜。 「な、何がおかしい」 「いえ、私の同級生にも智代に似たような人がいるんです。普段は私は乙女なのよ、と公言してはばからない人なんですが、ちょっとイジられると男勝りな地が出てしまうという」 あまり似ていないようで、けっこう似ていた。世の中には以外と同類がいるものだ、と智代はしみじみと思う。 「って、無駄話してる時間はないぞ。さっさと行こう」 「そうですね、行きましょう」 そのまま二人は街道に沿って平瀬村へと向かう。途中で軽く水分を補給したりしつつ、日が暮れる頃にようやく平瀬村付近まで辿り付く事が出来た。 「くそ、以外と遠かったな。茜、まだ大丈夫か」 「はい、今のところは…ですが、多分明日は筋肉痛ですね」 「何だ、普段は運動してないのか」 「か弱い女の子、ですからね」 ムッ、とする智代。まるで私がか弱い女の子じゃないみたいじゃないか。 「失礼だな。こう見えても私は…」 反論しようとして、言葉が出ない。…そう言えば、生徒会長になる前は草野球をやったり、ゾリオンに参加したり、春原を蹴っ飛ばしたりとおよそ女の子らしくないことばかりしている。 「…行こう、茜」 「あれ? 何か言おうとしていましたよね」 「いいんだ、放っといてくれ…」 うなだれながら歩く智代に茜は取り敢えずか弱い女の子、はNGワードに指定しておくことにした。 またしばらく歩くと、徐々に民家が密集している地点まで来た。 「家がたくさんありますね。日も暮れてきましたし、どこかの家で休憩した方がいいと思うのですが」 「そうだな…出来るなら…なるべく目立たないところのほうが…いいな…」 まだうなだれている智代。それでもしっかり意見するところは流石である。 「そうですね…あそこの倉庫あたりならいいのではないでしょうか。何か武器らしいものが見つかるかもしれませんし」 「分かった…それじゃ…行こうか…」 茜はこんなので大丈夫だろうかと思いつつも明日になれば大丈夫だろう、と思って何も言わずにおいた。 放送の時間までは、もうすぐだった。 坂上智代 【時間:午後6時前】 【場所:F−2、倉庫前】 【持ち物:手斧、支給品一式】 【状態:やさぐれている。そのうち復活?】 里村茜 【時間:午後6時前】 【場所:F−2、倉庫前】 【持ち物:フォーク、支給品一式】 【状態:足に軽い筋肉痛。行動には支障なし】 - BACK