「ふん…まあまあのペースだな。まあ及第点といったところか」 とある部屋の一つで、沖木島のモニターを見ながら男が呟く。島のあちこちに点在している光点。それはこの殺し合いの中で懸命に生きている参加者の命の灯火だった。 そして周囲のマイクからは、ひっきりなしに怒声や悲鳴、銃声や爆発音が聞こえてくる。 「ち…できればリアルタイムで見たかったものだがな」 マイクからゲームの参加者の絶望の声や狂気の声を聞く事はできるものの、映像まではモニターに映し出されていない。その光景を直に見る事ができないのが、男には不満だった。 「もうそろそろ、1回目の定時報告の時間だと思われますが」 何時の間にか男の側にいた側近が、無機質な声をかける。 「何? もうそんな時間か…分かった、下がっていいぞ」 「はい。…ですが、その前に一つお聞きしたいことが」 「何だ」 「本日、秘書として配備される予定になっていた『ほしのゆめみ』をまだ見ていないのですが」 男は、ああそんなことか、とつまらなさそうに言った。 「気が変わった。あの中に放りこんだよ。今ごろは暢気な面して呆けてる頃だな」 「放りこんだ…よろしかったのですか」 「構わんさ。首輪はきっちりとつけさせてもらったし、別に計画に支障はない」 それに、と男が付け加える。 「人間の心がロボットに、どんな影響を与えるのか興味が湧いてな。HMX−17aだけでは十分なデータが取れないのでね」 くくく、これもお遊びさ、と男が笑う。側近はそれを聞くと一言、ありがとうございます、と言って退出した。 部屋には、再び男一人だけとなる。 「さて、久瀬を使うか。どんな顔をするかな、参加者の諸君は」 【時間:1日目午後6時、放送前】 【場所:不明】 - BACK