散りゆく者への子守唄




「珊瑚さまぁぁぁぁぁ!! 瑠璃さまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 貴明さぁぁぁぁん!」
やはり、のんびり探すことなんて出来ませんでした。
自分の安全を優先してゆっくり探している間に瑠璃様の身に何かあったら、私は壊れてしまうでしょう。
「何処にいらっしゃるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この、心が。
何処にいる何処にいるこの壊れた島の何処にいるはやくみつけないとはやくはやくはやく

「――みなさん聞こえているでしょうか。
今から僕は一つの放送をします。
これは今後朝の6時と夕方の6時に1日2回定期的に行われます。
出来るだけ聞き逃さないようにしてください。
あなたがたの大切な人の命に関る問題です」

「これから発表するのは……今までに死んだ人の名前です」

「!?」
死んだ人の発表?何ですかそれは?
誰かが死んだ?
誰が?誰が?誰が?ああああああああっ!!

「――それでは発表します」

「っ……! 聞かないと……」
瑠璃様が死んでいるはずがない……
そんなわけない……



018 柏木楓……

033 草壁優季……

053 椎名繭……

流れる時間が緩慢に感じられます……
貴明様は無事でした……
瑠璃様はっ……珊瑚様はっ……

061 醍醐……

068 月宮あゆ……

まだですかっ……!
早く……早く86番過ぎ去ってくださいっ……!

092 伏見ゆかり……

「! ……っはぁ……」
全身をがちがちに固めていた緊張が解ける。
安堵が押し寄せてくる。
足が砕け、崩れ落ちる。
「よかっ……た……」
機械仕掛けの少女は、へたり込みながらそう呟いた。
泣きそうになりながら、涙を流すことはなく。

「――以上です」



瑠璃様は……無事でした……
珊瑚様も、貴明さんも……
本当に……良かった……
「でも……やっぱり、早く見付けないと……」
例え今の瞬間無事だとしても、もう次の瞬間にはどうなっているか分からない。
ふと、彼女は思い出す。
「そういえば……先程の放送……」
瑠璃様が過ぎ去るのを待っていた時、放送で出てきた名前は……
「伏見……ゆかり……」
エディさんの尋ね人が……亡くなられた……
「あぁ……」
私は、人が死んでいるのに、喜んでいました。
瑠璃様達が無事だからと、私は喜んでいました。
この読み上げられる名前一つで、一人の人生が潰えていると言うのに……
私は、喜んでいました。


「いえ……違います……」
人は、死ぬ。
それがこの島では頻繁に起こり、如実に分かる様になっているだけ。
この島でなくとも、今この時も人は死んでいる。
それでも、私はそれに対して何かを考えることは在りません。
知らないから、でしょう。
それとこの島にいる人とどう違うと言うのでしょうか。
私は、瑠璃様を愛しています。
珊瑚様も、貴明様も愛しています。
だから、死んでほしくありません。
いえ、死なせません。
私は、瑠璃様達だけを守れればそれで良いのです。
それ以上は、私の手には余ります。
ですから、見知らぬ人の死に心を痛めている暇は……在りません。
……在りません。
ですから、行きましょう。
瑠璃様を、守らないと。
それでも……
「これくらいは、良いですよね……」
目を閉じて、この島で散って逝った者達に対する黙祷を捧げる。
そのまま、十秒。
瞳を開き、名前しか知らない者達への黙祷を終わらせる。
「……電子仕掛けの人形の黙祷で意味が在るかは分かりませんが、どうぞ、安らかに……」
自嘲気味に呟いて、彼女は再び歩き始めた。
愛する人達を守りに行く為に。




イルファ
【時間:一日目午後六時過ぎ】
【場所:G-03とG-04の境目辺りの道の上】
【持ち物:フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬15発、デイパック】
【状態:瑠璃・珊瑚・貴明・宗一・皐月・夕菜・リサを探しながらエディと合流を目指す、冷静、最優先は瑠璃珊瑚貴明の安全】
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