第1回放送(ルートB’)




17:58

モニターの前に座りながらただ時を待つ。
画面は変わらずめまぐるしく切り替わり、現実を突きつけるようにゲームの有様を久瀬に知らしめていた。
ゲームの中で起きていること全てを確認できているわけではないが、何人かの死の瞬間も目撃してきている。
それでも彼が冷静さを失わないでいられたのは、知る限りでは知人がいまだ無事だと言うためだろうか。

自分に何が出来るのか。
ずっと考え続けていたものの答えは出るわけもなかった。
出来るのは従うことだけ。
無力さをかみ締めながら、モニターを眺め続けた。

――そして時が来る

17:59

画面が真っ黒に染まり、ゆっくりと赤く浮かび上がる番号、そして名前。
彼の知り合いの名前は……そこにはない。
不謹慎ながらも溜め息が漏れる。
だが、考えさせてくれる時間も与えぬまま、時は18:00を指した。



『――さぁ、久瀬君。お願いするよ』
ウサギが一瞬画面に現れ、その一言だけを告げそしてまた消える。


逆らえない言葉に久瀬はゆっくりと口を開いた。


「――みなさん聞こえているでしょうか。
 今から僕は一つの放送をします。
 これは今後朝の6時と夕方の6時に1日2回定期的に行われます。
 出来るだけ聞き逃さないようにしてください。
 あなたがたの大切な人の命に関る問題です」

久瀬の口がぐっと詰まる。

「これから発表するのは……今までに死んだ人の名前です」


そこまで告げるとゆっくりと画面を見る。
赤く染まる文字に心は揺れ、自分でも制御できない感情に押しつぶされそうになる。


「――それでは発表します。

002 藍原瑞穂
013 岡崎直幸
015 緒方理奈
018 柏木楓
027 河島はるか
033 草壁優季
061 醍醐
063 篁
068 月宮あゆ
092 伏見ゆかり
110 森川由綺


 ――以上です」

全ての死者の名前を挙げた瞬間、全身の力が抜け、久瀬はその場にへたり込んだ。
『名前を読み上げる』ただそれだけの行為にも関らず、吐き気を抑えるので精一杯だった。
もっと他にも言いたいことはたくさんあった。
――好意を寄せているあの人に。
――いつも衝突ばかりしているその友人に。
勿論それ以外の全参加者に向けて、こんな無機質な言葉ではなくもっと他の何か……。
だがそんな思考をさせてはくれないほどに、久瀬の体力は奪われていた。


『くっくっくっ、ご苦労様』

――画面から名前は消え、変わりに現れたウサギは皮肉なねぎらいをかける。
黙ってそれを睨みつけることしか出来ず、久瀬はそのまま項垂れるのだった。


久瀬
 【時間:1日目18:00】
 【場所:不明】
 【状態:嘔吐感】
 【195[久瀬のもうひとつの役目]を通るルートで】
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