「…ホンマにこんなところに何かあるんかいな」 目の前にそびえたつ不気味なホテル跡を見ながら保科智子(096)は疑わしげにエディ(010)を見た。 岸田の一件の後、まずはどこへ行くかを三人は話し合っていた。 「まずは仲間を探すかアホの主催者を倒す為の武器探しをするか、やな。正直、私らの装備じゃとてもやないけど蜂の巣にされるんがオチや」 エディは粉塵パン。新たに加わった笹森花梨(048)は警棒。そしてまだ支給品を見ていなかったという智子の装備は専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾だった。 銃や手榴弾には敵うどころか傷すら与えられるか怪しいものだ。 「マア待ちナ。もう一つ選択肢があル」 エディが手で智子を制する。 「そいつは情報、ダ。今のところ、オレ達に与えられている情報は島の地図と参加者名簿だけダ。どんな人物が参加しているのか、主催者の正体は何なのか。そういうのを全然知らないだロウ?」 「確かに、どういう奴が危険で、どういう奴が頼りになるかっていうのを知っておけば少しは楽になるかもしれへんな」 「うん。それに、このぶっさいくな首輪についても知りたいね。どーいう仕組みになっているのかな」 「それが分かったら、殺し合いなんてする必要もないやろ…」 智子が嘆息する。 「だけど、この仕組みさえ分かればその時点でこっちの勝ちってことでしょ? 無駄でも、調べてみる価値はあると思うんよ」 「その通りダ。どこかに端末でもあれバ、少しは調べようもあるだろウ」 「…端末ね。要するにコンピュータみたいなのを探せっちゅうことやな。で、そんなもんどこにあるって言うんや」 智子がそう言うと、エディは現在地からほど近いある場所を示した。 「…ホテル跡? そんなとこ探してどないすんや。コンピュータどころか何もないと思うで」 「イヤ、そうとも限らなイ。たとえ廃屋だとしても、客の管理用のパソコンくらいはあるはずダ。壊れていたとしてもちょっとやそっとの故障くらいならオレっちにだって直せル。メカには強いからナ」 すると、智子は感心したように言った。 「へぇ、そらすごいな。変なだけのオッサンか思てたら意外な特技があるもんやな」 「アアン!? オレっちのヘアースタイルがサザエさんみてぇだとォー!?」 「誰もそないなこと言うてないやろ」 「というか、どうしてサザエさんなの? 全国の磯野家ファンに失礼だよ」 女性陣二人から鋭い指摘を受ける。エディはジョークに乗ってくれないことにがっかりしながらも、まあこれくらい強気ならこれからも安心だろうな、と思った。 そして歩く事約二時間。ようやく目的のホテルに辿りついたまでは良かったのだが。 「…ホンマにこんなところに何かあるんかいな」 「い、いや…まさかここまでボロいとは…けどナ、探してみない事には始まらないだろウ」 「時間の無駄やと思うで。さっさと他の場所に行くべきや」 二人が口論している中、ただ一人キラキラと目を輝かせていたのは花梨だった。 「こ…ここは、まさに心霊スポット! ミステリの匂いがぷんぷんするんよ! しかもこのおどろおどろしい雰囲気…幽霊発見も夢じゃない! いざ行かん、無限のかなたへーっ!」 「…ともかく、こんなとこに入るメリットはないって言うてんのや。な、花梨もそう思うや…ろ?」 智子が花梨の方を向いたが、そこに花梨の姿は無かった。 「…おい、花梨の奴はどこや」 「…ミステリーがどうだこうだと言ってたガ…」 二人がホテルを見上げる。 「…行くしかないようやな」「行くしかないナ」 かくして、一人の少女の暴走によりエディ一行はホテルを探索することになったのだった。 『笹森花梨(048)』 【時間:1日目午後5時ごろ】 【場所:E−4、ホテル跡】 【持ち物:特殊警棒(ランダムアイテム)、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)】 【状態:ホテル内探索中。怪しげなものを探す】 『エディ(010)』 【時間:1日目午後5時ごろ】 【場所:E−4、ホテル跡】 【所持品:支給品一式、大量の古河パン(約27個ほど)】 【状態:健康、まずは花梨を探す】 『保科智子(096)』 【時間:1日目午後5時ごろ】 【場所:E−4、ホテル跡】 【所持品:支給品一式、専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾】 【状態:健康、まずは花梨を探す】 - BACK