「雅史ちゃん・・・っ」 「あかりちゃん!!」 誰にも遭遇することなく走り続けた佐藤雅史は、今は切り株の上に座り休んでいた。 運動部所属といえど、体力も限界。 出発して数時間経つが、今だ誰とも出会ってはいない。 本当に120人もの人が存在するのだろうか。雅史は不安になっていた。 そんな時である、幸運な再会が訪れたのは・・・。 幼なじみでもある少女、神岸あかりも自分が初めてあった人だと語った。 「でも良かった、雅史ちゃんで」 ・・・僕も、と、雅史は心の中で答える。 雅史の中に眠る、あかりに対する恋心は消えたわけではない。 ただ、相手が浩之であるから。 だから、堪えることができていただけだ。 「ん?何、雅史ちゃん」 屈託ない表情、今だけはこれを守る権利は自分にある。 ・・・そう考えるだけで、なんだか幸せな気持ちになれる。 「ところで雅史ちゃん。雅史ちゃんはこれからどうするの?」 「え・・・」 言えない。 -----助けるべき人は助けて、倒すべき敵は倒す そんなこを言ったら、彼女を怯えさせてしまうかもしれない。 雅史は焦った、だがあかりはそんな様子を気にすることもなく。 「私はね、みんなを探したい。できれば雅史ちゃんも手伝ってくれると嬉しいな」 「そ、そうだね、うん。一緒に頑張ろう」 「ありがとう、嬉しいよ。・・・浩之ちゃんより早く皆を見つけて、さっさと始末しちゃおうね」 ・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・。 「えっと、ごめん、あかりちゃん。何て言ったのかな」 「ん?だから、浩之ちゃんより早く見つけて、始末・・・」 「な、何で?!仲間でしょ、友達でしょ?!・・・し、始末って・・・」 あかりの様子があまりにもいつも通りのため、雅史は一人でパニックを起こしていた。 対するあかりはにっこり微笑み、心中を説明はじめる。 「ねえ、聞いて、雅史ちゃん。私、浩之ちゃんが好きなの」 「・・・痛いほど知ってるよ」 「でもね、浩之ちゃんが誰がすきなのか、多分まだルートは決まってないの」 「は?」 「本来なら、浩之ちゃんが私以外を選ぶなんてありえないけど・・・でもね、仕方ないの。浩之ちゃん、女好きだもん。」 「ま、まぁあれだけ無差別に声かけてたら、そう思うかもしれないけど・・・」 「私には宮内さんみたいなおっぱいも、志保みたいな明るさも、理緒ちゃんみたいなマスコット性も、 琴音ちゃんみたいなか弱さも、葵ちゃんみたいなひたむきさも、芹香先輩みたいな上品さも、 マルチちゃんみたいなドジ属性も、保科さんみたいな眼鏡っ子属性も、綾香さんみたいな活発性も、 セリオさんみたいな素直クール属性も何もないの。ないない尽くしなの」 「え、いや、でもあかりちゃんには幼なじみ属性が・・・」 「雅史ちゃん知ってた?宮内さんも、実は幼なじみのようなエピソード持ってるの」 「・・・・・・」 「私、浩之ちゃんのためなら何でもしたよ。・・・それなのに。 浩之ちゃんがサラサラストレート好きって言うから、髪形変えたのに。 料理だって、浩之ちゃんの好きな味覚えて、ここまで上達させたのに。 成績だって、浩之ちゃんに教えて上げられるためにいつも上位キープしてるのに。 何で私以外の女の子と仲良くするのかな、何で私だけを大切にしてくれないのかな」 ブツブツ、ブツブツ。あかりの呟きは止まらない。 瞬きすらしないその瞳は、見ていて狂気の暗さを与える。 「雅史ちゃん、これはチャンスなの。浩之ちゃんを、私だけの物にできるチャンスなの」 「あかりちゃん・・・」 「あの子達がいなくなれば、浩之ちゃんは私の物なの!他の誰にもとられたくないの、・・・ああ、でも」 一呼吸置く。 「------志保なら、いい。志保のつらさは分かるから、それに志保は私の大切な親友だもの」 雅史は、二の句が次げないでいた。 正直逃げ出したい気持ちの方が強い、でも、そんな訳にもいかず。 グリンと首が回り、あかりは雅史の目を覗き込むような体勢に。 雅史は動けないでいた。あかりもそれを許さないかのように、彼の目を見つめ続け。 ニヤっという笑みは、さっきの物とは大違い。 その表情のまま、あかりは告げる。 「私たち友達だよね、雅史ちゃん」 雅史は、滴る冷や汗を拭うこともできなかった。 また、その時目の錯覚かもしれないが、あかりの双眸が青白く光ったように、見えた・・・ 佐藤雅史 【時間:1日目午後3時過ぎ】 【場所:G−06】 【所持品:金属バット、他支給品一式】 【状態:困惑】 神岸あかり 【時間:1日目午後3時過ぎ】 【場所:G−06】 【所持品:支給品一式】 【状態:志保以外の東鳩女子を抹殺する、他者は興味ない】 - BACK