ちょっと前の話




時はゲーム直後に遡る。

彼女、河島はるかにとってこの世界は惰性でしかなかった。
大好きな兄を交通事故で失い、閉ざした心の扉を開けてくれたのは友人達であったが、
彼女の世界が惰性で進んでいることには変わりはなかった。
夢も目的もなく、ただ生きているのは死んでいるのと同じである。
これは一体誰の言葉だっただろうか。


それは少女、上月澪の目前で起きた。
目の前で話を聞いていた男性、古河秋生の腹部からニンジャソードの切っ先が現れた。
それはなぎ払われ、古河秋生はひざを着いて崩れた。
崩れ去る古河秋生から眼を離すと、そこには右手に血塗られたニンジャソードを携えた女性、河島はるかの姿があった。
澪は今から殺されるのだと思ったが、恐怖のあまり逃げ出す事も出来ず、ただ震えて立ち尽くすのみだった。
だが、女性はその刃を向ける事も秋生の荷物を奪う事もなく、澪の横を通り過ぎてどこかへ去ってしまった。
その場には澪と秋生だけが残された。
秋生は澪に愛する家族達への言葉と自分のデイバッグを託し事切れた。
声を上げて泣きたかったが、澪にはそれは許されていなかった。
澪はこの場を離れようと重い足取りで村の入り口へと歩いていった。
澪が水瀬秋子と出会うのはほんのちょっと先の話である。


快楽殺人というものがある。
人の命で心の空白を生めることが出来るのならゲームに乗るのもいいと思った。
だが、それは思っていたほど楽しいものではなかった。
この島にいれば、いずれその気になった者により殺されるだろう。
それも、もうどうでも良かった。
ほんの少しだけ友人達のことが気がかりではあったが。




93 古河秋生 死亡

27 河島はるか
【時間:ゲーム開始直後】
【持ち物:ニンジャソード、他支給品一式】
【状態:やる気なし。別の場所に移動。返り血浴びてます】

41 上月澪
【時間:ゲーム開始直後】
【持ち物:デイバッグ2組、他支給品一式】
【状態:恐怖、村の入り口に移動】
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