坂上智代は里村茜は、海沿いに歩いていた。 もっとも二人の持つ武器では護身には少々不十分である為、その足取りは非情に慎重であった。 二人は街道をさけ、海岸沿いに平瀬村へ向かっていた。 街道は危険と判断しての行動である。 今の二人の状態で敵に襲われてはひとたまりも無い。 「おい、あれは・・・。」 何かに気付いた様子の智代が指を指している。 「・・・・?」 智代が指を指している方向を見ると、一人の老人が立っていた。 「幸村先生!!」 5分後、老人――幸村俊夫と、智代達は簡単な情報交換を済ませ、本題に入っていた。 「ほうほう、つまりわしに仲間になってくれと?」 「その通りです。正直な所、もっと協力者がいないとどうにもなりません。」 「・・・・。」 茜は黙って様子を見ていた。 「こんな老いぼれがどれだけ役に立つか分からんが、いいじゃろう。 わしの学校の生徒や、生徒達と年頃の子供を見捨てるわけにはいかんしな・・・・。」 あっさりそう言うと、老人はすぐに歩き出した。 智代は慌てて追いかけ、遅れて茜もついてきている。 「このゲーム、私達の学校の生徒も一杯参加していますね・・・。」 「そうじゃよ・・・。みんな無事だったらいいんだがの。 わしのような老いぼれは死んでも良いが、若いもんがこんな所で死ぬのは耐えられん・・・・。」 幸村が遠い目でそう言うと、智代はそれきり何も言えなくなり、 茜も幸村も口を開く事なく歩き続けた。 一行は、暫く歩き続けると海岸に船を発見した。 「おい、船があるぞ!・・・でも、外傷が激しいし故障していそうだな。」 「・・・・それでも、修理すれば脱出の時に使えるかも知れません。」 「そうだな。とにかく行ってみるか!」 二人は脱出方法が見つかったかもしれない事に、興奮しており、周りが見えなくなっていた。 (もっとも修理する技術がある者が仲間にいないし、首輪の問題もまだ未解決であったが。) 出発当初の慎重さは、全く無くなっていた。 この時海岸に捨てられたバックに気付いたのは、幸村だけだった・・・・。 二人は我先にと船に乗り込み、まずは船尾の方を調べてみた。 船尾は外損以外特に損傷は見当たらず、修理すれば問題無さそうであった。 次に二人は船室を調べるべく、 船室の扉を開けた。 その瞬間、 「駄目じゃっ!!」 幸村が二人を突き飛ばしていた。 その直後、 パラララララ!!という音が聞こえ、 二人が顔を上げると、 幸村は体中のあちこちから血を迸らせていた。 「な―――!?」 「くそっ、勘付かれたっ!?」 3人一気に仕留めれると確信していた山田ミチルは予想外の出来事に一瞬狼狽したが、 すぐにMG3を構えたまま走りこんできた。 茜も智代もあまりに突然過ぎる出来事に動けない。 ―――駄目だ、殺られる 二人が、そう確信した時だった。 幸村は最後の力を振り絞り、彼の支給武器――煙球を、船室内に叩きつけていた。 「な・・・!!」 突然ミチルは視界を奪われて、立ち往生していた。 グイッ!! 茜は強引に智代の腕を掴むと走り出した。 「おい、離せっ!!先生を助けにいかせろっ!!」 智代は強引に振り払おうとするが、茜は手を離さない。 「・・・お願いですから、黙ってください・・・・。」 彼女にしては珍しく、感情の籠もった強い口調で言った。 「お前・・・、泣いてるのか?」 それ以降二人は何も言わず、ただ走り続けた。 涙を流しながら・・・・。 【時間:16時】 【場所:D-1】 坂上智代 【持ち物:手斧、支給品一式】 【状態:体は健康。逃亡中】 里村茜 【持ち物:フォーク、支給品一式】 【状態:体は健康。逃亡中】 山田ミチル 【所持品:MG3(残り30発)、他支給品一式】 【状態:普通。マーダ―。この後の行動は次の書き手さんにお任せ】 幸村俊夫 【持ち物:支給品一式(その場に放置)】 【状態:死亡】 - BACK