そこは、掘っ立て小屋のようなものだった。 源五郎池淵、多分この池を管理するためであろう物置のようなところに、相良美佐枝は隠れていた。 今は使われていないのであろう、天窓を開け喚起しても、空気はまだ埃臭い。 (開始数時間で20人以上・・・一体どうなってるんだい) 溜息。地べたに腰掛け、ガダルカナル探知機を起動させながら美佐枝は呟いた。 この探知機の機能を知った彼女は、その足で逃げ隠れ場所を確保すべく氷川村へ向かった。 しかし、よくよく考えてみれば隠れる民家のある村では、人の集まりも激しくなるであろう。 ・・・戦闘面では全く歯が立たない自分の装備、まずはどこかに隠れ状況を整理するしかなかった。 彼女がこの物置を見つけたのは正に偶然、氷川村へ進路をとっていた最中であった。 運が良かったとしか、言いようがない。 美佐枝はいまいちど自分の名簿を広げる。 そこには、いくつもの印があった。 斜線は死亡者、丸で囲んだものは殺害者。 筆記用具はここで見つけた、それ以来美佐枝は敵対関係などを細かくチェックしている。 この場所についてから30分弱。 少々の休憩の後、美佐枝はひたすらそれに時間を費やした。 殺害者に関してはうまくタイミングがかち合わないと分からなかったが、これまでの死亡者の確認は既に終わっている。 ふぅ、と溜息。・・・美佐枝には、まだ考えることがあった。 この探知機の不安、よく見ると右上画面にバッテリーを表す電池のマークがあるのだ。 最初つけたであろう時は満タンだったと思うが、今は三分の一ほどの空間ができている。 (まずいね、一端電源を切った方がいいのかもしれない) 正直、それは心もとない選択である。 今は安全だろうし、切手も大丈夫かも知れないが・・・ その時、電池マークの下にもまた違うマークがあるのに気づいた。 (あれ、こんなものあったかい・・・?) 触れてみる、ピッという音と共に一つのウィンドウが現れた。 「・・・・・・・ロワちゃんねるポータブル?」 不思議そうに見つめる美佐枝、この手のことにはうといらしい。 色々いじってみて、何とか違う画面に移るとその内容に驚いた。 自分の安否を報告するスレッド 1:藤林杏:一日目 12:34:08 ID:ajeogih23 見知った名前である。 ・・・安心した、その内容を見る限り彼女はゲームに乗っていないことになる。 「よし、いっちょあたしもやってみるか・・・って、あれ。どうやって書き込めばいいんだい?」 残念、この探知機はロム専用なのでそれはできないのだが美佐枝は奮闘し続ける。 数分後、諦めてウィンドウを閉じ(これまた苦労して)美佐枝は元のマップ画面に戻った。 (・・・そう言えば、あの子はまだ無事かね) ふと、杏のことが気になった。まだあの子は無事だろうか。 ピっと、マップ上の自分だと思われる光点に触れる。 (047)相良美佐枝 プロフィール画面、勿論美佐枝の物。 ここで名前の隣の番号に触れると、番号の一覧が出てそこから人の検索ができるのだ。 慣れた手つき、もう探知機の把握は完璧であった。 (藤林、藤林・・・090、と) ピッ。杏の写真はカラーである、まだ無事な証拠だ。 よかった、素直にそう思った・・・その瞬間。 殺害数 1 その表示に、驚愕した。 見間違い・・・ではない。 もう一度ロワちゃんねるを開き彼女の書き込みを確認するが、現実に変化はない。 (何てこったい・・・) 溜息、そして愕然。 気がついたら、美佐枝はこめかみに手をやり目を閉じていた。 -------------彼女が杏の身に起きていたことをチェックできていれば、この誤解は生まれなかったのかもしれない・・・ 相楽美佐枝 【時間:1日目4時50分ほど】 【場所:H−06】 【持ち物:ガダルカナル探知機(残り電池2/3)・支給品一式】 (美佐枝がどこまで敵対者を理解しているかは書き手さんにお任せします) 【状況:杏に疑念。冷静に交戦を見守っていたが、少し混乱】 - BACK