天才少女と医者




霧島聖(032)は七瀬と分かれた後、
鎌石村中心部の民家で探索を行なっていた。

妹を探す為、そしてある物を探す為だ。
ある物を探す作業は、終わりを迎えようとしていた。
「ふむ、これだけあれば応急処置をする分には困らないか。」

彼女の鞄には、包帯・消毒液・化膿止め・糸などの、治療用の道具一式が入れられていた。
彼女はこの絶望的な状況下においても、医者であり続けるつもりなのだ。
「本当ならもっと色々と道具が欲しいんだが、診療所は遠すぎるからな。」
そう呟き、外に出ようとするとしたが、聖はある事に気付きその足を止めた。

丁度少女、一ノ瀬ことみが家に入ってこようとしている所だったのだ。

相手も当然自分に気付き、慌ててナイフを取りだし、そのまま固まっている。

「待て待て、私は医者だ。誰かに危害を加えたりするつもりはないんだ。」
「君もこの家に用があるのか。私はもう外に出るから、後は自由にしてくれたまえ。」
そう言うと、両手をあげ、敵意が無い事を示しながら少女の横を通り過ぎる。
ことみの方はまだ警戒心を解いていないのか、黙って聖の方を見据えていた。


聖はある事を思い出し、振り返った。
「ああ、私は妹を探しているんだが、霧島佳乃という子を見なかったか?」

「ごめんなさい、このゲームで出会ったのは、あなたが始めてなの。」
ことみは初めて口を開いた。

「そうか。では失礼するとしよう。」
聖はそう言い、立ち去ろうとした。


ことみは少し考えた後、ある事を決心した。
「待って!あなたはこれからどうする気なの?」
「私か?私は妹を探し出し、それからゲームを脱出する方法を考え出すつもりだ。」
「なら、私と一緒に行動すれば良いと思うの。私の目的も、脱出する事なの。」

そう、ことみは聖を信用する事にしたのだ。
聖はゲームに乗る気は無いと言ったが、勿論ただそれだけで信用するのは危険過ぎる。
しかし、理屈では表せない、信用出来る独特の雰囲気のようなものを、彼女は持っていた。
ことみはそれに賭ける事にしたのである。
どうせ理屈でいくら考えても、相手が100%信用出来るかどうかは分からないのである。

「・・・ふむ。悪くない案だ。しかし、私はゲームに脱出する事よりも、
まずは妹を探し出す事を優先するつもりだぞ?」
「問題無いの。もっと人を集めないとこのゲームを脱出するのは無理なの。
人探しをするのは大歓迎なの。」

暫くして、聖が口を開いた。
「わかった。なら一緒に来ると良い。」
「! 聖先生、ありがとうなの!」

聖は笑みを浮かべつつ、語りだした。
「君は幸運だぞ。私なら多少の怪我はすぐ応急処置出来る。」
「おまけに多少は腕に覚えがあるつもりだ、絶対に人殺しはしないがな。」
「更にある程度は頭も良いつもりだ。相当頼もしい人材である事は間違いないだろう。」


(・・・・聖先生ってもしかして、結構お調子者なの?)
いきなり先行きに不安を覚えつつも、
一ノ瀬ことみと霧島聖の知性派(変人でもあるのだが)コンビは歩き出した。




【時間:1日目午後5時過ぎ】
 【場所:C−03】

 霧島聖
 【所持品:支給品一式、治療用の道具一式】
 【状態:健康。佳乃を探し、それからゲームの脱出を図るつもりである。】

  一ノ瀬ことみ
 【持ち物:暗殺用十徳ナイフ、支給品一式】
 【状態:健康。仲間を集め、それからゲームの脱出を図るつもりである。】
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