フラグの因縁




「勝平さんやお姉ちゃんはどうしてるのかな」
 藤林椋(091)は姉や恋人と合流すべく散策を行っていたが、
まだ誰とも会えずにいた。とりあえず休憩しようと木にもたれかかり、
手に持った支給品を見つめる。武器はベレッタM92、大ハズレである。
ルートHやルートIならアタリだったんだろうね。

「椋ちゃんこんにちわなの」
「え……あ、ことみちゃんこんにちわ。というか、すごい格好ですね」

 目の前には一ノ瀬ことみ(006)が立っており、
その上半身は豪華な鎧に覆われ、巨大な剣を持っていた。なんというか、趣味が悪い。
いつの間に? そんなぼーっとしていたつもりはないんだけどと
訝しがりながらも、椋は友人との再会を喜んだ。

「私は初めて会ったのがことみちゃんなんですけど、
ことみちゃんはお姉ちゃんたちが何処にいるのか知りませんか?」
「知ってるの。でも教えてあげないの」
「えっ……」

 気がつくと、椋は首に剣を突き付けられていた。
「こ、ことみちゃん、冗談はやめてください」
「私は知ってるの。朋也くんが図書室に来なくなったのは椋ちゃんの仕業だってことを」
「な、何のことを言ってるんですか?」
「椋ちゃんは図書室に行こうとする朋也くんに向かって、上目づかいで
 『あ、あの…どこにいくんですか…?』
とか言って引き止めたの」

それなら椋とことみは友人になっていないのではないかという邪推はしてはならない。

「あれはクラス委員長として……」
「それを口実に色目を使っていただけなの。そうやって私のフラグをつぶしておきながら、
他のイケメンが現れたらあっさり乗り換えた尻軽女なの」
「それが魁クオリティーなんですよ! 勝平さんのことを悪く言わないでください」
「その勝平くんは、ゲーム開始早々に女の子の頭を鉈でかち割ってたの。
脳をぐちゃぐちゃかき混ぜて、愉悦の表情を浮かべてたの。
椋ちゃんは男を見る目がないの」
「そ、そんな……」

 椋は恋人の豹変を聞かされて呆然としていた。ことみはさらに剣を近づける。
「命が惜しいなら服を脱げなの」
「な、何をする気ですか…」
「この島にはガイキチがいるの。淫乱の椋ちゃんには、
ピコピコしゃべる実験動物のお供の肉奴隷がお似合いなの」
「い、いやです」
「それなら私が脱がしてあげるの」

 ことみは素早く椋を組み伏せると、服をびりびりと引き裂いた。
そして自らの下着をずらし、椋に股間の一物を突き立てる。

「きゃっ、やめ」
「ガバガバなの。乗り換えそうそうやりまくってるとは、
さすがはイケメンなら誰にでも股を開くと評判の椋ちゃんなの」
「だ、だれがそんなこと…」
「こんなヤリマン、肉奴隷にさせても喜んでよがるだけなの。
もういい、さっさと死ね」
「だったらテメェがやってることはなんなんだよこのふたなりやろぉーーーーー!!」
一瞬のスキをついて椋はベレッタの引き金を引こうとするが───

───グサリ───

「遅すぎるの」




  一ノ瀬ことみ
 【時間:午後2時半ごろ】
 【場所:E−05】
 【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
 【状況:壊れてきた】

  藤林椋
 【時間:午後2時半ごろ】
 【場所:E−05】
 【所持品:ベレッタM92、デイバッグ(その場に放置)】
 【状態:死亡】
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