最初の失態




「-----ちっ、何だ、違ったか」

その瞬間聞こえたのは舌打ちだった。
住井護と春原陽平の視線の先、ショットガンを構えた男は巳間良祐であった。
駆けつけた彼の予想とは反する風景が、目の前には広がっていた、
そう、彼が聞いたのは女性の声。今は亡き仁科りえのものであった。

脱兎、次の瞬間良祐は場を離れる。
残された二人は、ぽかんと彼を見送るだけであった。


殺そうと思えば殺せた、何せ彼の支給武器はショットガンという当たりだったのだから。
しかし、彼は撃たなかった。否、撃てなかった。
動揺、「もしかしたら」を考えていた彼の思考、それを裏切られ不安定になっていたのだ。

(馬鹿か、俺は。そんなの、確率的には絶望的に低いに決まっているというのに)


ちょうど考えていたから、その手の事柄に結びついたのかもしれない。
襲われた女性が、もし彼女だったら。
・・・妹、晴香だったら、と。

名簿を見た際すぐ気がついた、自分の一つ前の番号の持ち主。
巳間晴香。結局施設で再会したにも関わらず、口はほとんど聞けていない状態の身内。

(・・・とんだ失態だ。もう許されないな、こんなことは)

気を引き締める。
冷静に、感情を押し殺しこのゲームに集中することを決意する。

(それに、このゲームは一人しか生き残れないのだから・・・あいつのことを気にしても、意味はないんだ)

-------次会う人間が晴香だとしても、殺らねばいけない。
良祐の心に青い炎が燃え上がる。

彼の甘さは、この瞬間掻き消えた。




巳間良祐
【時間:1日目午後12時15分頃】
【場所:G−5(移動済み)】
【所持品:ショットガン(ベネリ M3)銃弾数7/7・支給品一式・優季の荷物】
【状態:ゲームに乗る】

住井護
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5】
【持ち物 コルトパイソン】
【状況:銃口を春原の頭につきつけたまま呆然】

春原陽平
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5 】
【支給品 不明】
【状況:頭に銃口をつきつけられていることも忘れて呆然】

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