死神




少年は覚悟を決めつつあった。
このゲームに参加する覚悟を。
罪の無い者達を容赦無く殺す覚悟を。

彼は一回目の放送が終わるまでは、何も許されていない。
人を殺す事も、助ける事も。しかし、一回目の放送以降は違うのである。


このゲームに於いて最初の数時間は緊張や恐怖から暴走する者も多く、
殺し合いは盛んに行なわれるだろう。

しかしそのような暴走の仕方をする愚かな者は、大抵がすぐに命を落とす。
このゲームにおいて冷静さを失う事はそのまま死に直結する。
生き残るのは十分な冷静さを持った者か、運の良い者なのだ。
ゲームに乗る、乗らないに関わらず、だ。

以上の事を考えると一回目の放送が終わる頃には、暴走している者は減るだろう。
慎重に行動する者が多くなり、少々殺し合いのペースが落ちてしまう筈だ。

お互い憎しみ合う激しい殺し合いを望む主催者にとって、それは避けたい状態だ。
それを危惧した主催者は少年に使命と、その使命を遂行する為の強力な装備を与えた。
少年の使命とは―――


1回目の放送以降は、容赦無く参加者を殺して回る事である。
女も、自分の友人も、自分の恋人である郁未ですら、容赦無く。

愛する者を殺されたり、襲撃を受けた者の多くは冷静さを失うであろう。
冷静さが失われれば、殺し合いは加速する。
要はきっかけさえあれば、悲劇は連続して起こるのだ。

そのきっかけを作る為に準備されたジョーカーが、
少年である。

「僕に自由は許されていない。自分の感情を口にする事すら許されていない。」
「でも、僕に郁未が殺せるのかな・・・・。」

少年の呟きに答える者はいない。

放送まで後僅か。
最強の死神が解き放たれる時が、刻一刻と近付いていた・・・。




 少年
【場所:神塚山山頂(F-05)】
【時間:午後5時30分】
【持ち物:不明(強力な装備を数点)】
【状況:異常なし】
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