マーダー・ゲーム




やることも特になく、向坂雄二と新城沙織はただただ時間を持て余していた。
訪れる者もいない。
むなしい、自分達ができる最善のことなんて思いつかなかった。

「コレじゃあねー」
「ねー・・・」

ボロボロの大学ノートにフライパン。
わざわざこのゲームに乗る気があったとしても、まず役には立たない代物。
二人は、相変わらず灯台の最上階にて地上の景色を眺めるしかすることがない状態であった。
その時。

「きゃっ!」
「わ、こりゃ強い・・・あ。」

突風が二人を襲う。
高い場所にいたからこそ、その威力は強くなていたようで。
・・・気がついたら、バサバサバサっと宙を舞う大学ノートが雄二の視界に入った。
うっかり手を離してしまったらしいソレは、まっさかさまに落ちていく・・・

「ま、待ってくれ!俺の支給品〜」
「え、雄くん?!」

起こった風から長い髪と短いスカート庇っていたため、事の顛末を見ていない沙織はただ慌てるだけだった。



使いようはなくとも、一応はこれが雄二の武器である。
特に愛着がある訳ではなくとも、いつか役に立つ時が来ると信じているのだ。

急いで階段を駆け下り、形振りかまわず外に出る。
ノートの落ちる様は見ていたため、回収自体はすぐに終わった。
ポンポンと土ぼこりを払い、パラパラと中身を確認。

「よし、どっかのページが抜けている訳でも無さそうだな。」

あまり乱暴に扱ってしまっては、それこそあっという間にバラバラになってしまいそうな一品である。
これからは大切に扱おうと、ちょっぴり思った。。

「あー、よかったよかった。よし、じゃあ戻ろう」

クルリ。方向転換。

・・・ん?何か、今、視界の隅に映ったような・・・

「Checkmate!!!」

ザックリ。その時、向かって左腹に衝撃が広がった。
瞬間、熱。
熱い、熱い痛み。これは・・・

「いっ・・・な、何だこれっ」

矢。そうとしか言えない。
よく弓道部の女の子が打っている弓矢の矢、それが雄二の横腹に突き刺さっていたのだ。
ガクン、じわっと広がる流血の感触に気を失いそうになりながら、雄二は矢の飛んできた方向を見据える。

「ハンティング成功ネー!弘法は弓を選ばずではなく、弓が弘法を選ぶのネッ」



陽気な台詞の持ち主は、宮内レミィ。
彼女は馴染み深い和弓を手にし、有無を言わさず雄二へとどめを刺した。


その後はスムーズであった。
雄二を追ってきた沙織は、ただ事態が飲み込めぬまま震えるだけで。

「ン〜、これだとハンティングのしがいなさ過ぎネ〜」

それでも一切の容赦は無い、レミィは的確に急所を狙い沙織を沈黙させた。
今はもう動かない二人に刺さった矢、それらは躊躇いなく回収される。

「もったいないオバケが来るヨー。限りあるアイテムは大切に、ネ♪」

そして、その際気づいたのは。
雄二の近くに放られた、一冊の大学ノートであった。

「・・・・・??」

首をかしげながらも手を伸ばすレミィ、パラパラとめくるが、記述は特にない。
そう、最初の内側の、「使い方」以外は。
レミィはしばらく「使い方」を眺めると、「AHAHAHAHA!」と声に出して笑った。

「オウ!まさしくDEATH・NOTEネ。ジャパニーズジョークは意外とシュールネッ!!」

新しいおもちゃを手に入れた子供のように、きゃっきゃっと喜ぶレミィ。
一頻り笑って満足した後、次の獲物を求め移動を再会するのであった。

「MurderGameは始まったばかりネ。これからが楽しみヨーッ!」




宮内レミィ
【時間:1日目午後4時過ぎ】
【場所:I−10(琴ヶ崎灯台)】
【所持品:和弓、矢・残り5本(回収したので)、死神のノート、他支給品一式】
【状態:ゲームに乗っている】


向坂雄二  死亡

新城沙織  死亡
-


BACK