「このクッキーは携帯食として使えそうだな。」 藤田浩之達は、平瀬村の民家の探索を行っていた。 柳川から簡単な事の経緯は聞きだしたが、 それ以上詳しく話を聞ける状態ではなかった為、 情報収集は一旦中断して、かれこれ40分近く、生き残る為に必要な物を探していた。 大体このゲームは開始時の支給品だけでは、あまりにも不十分である。 生きるのに絶対必要である食料でさえ1日分程度しか与えられていないのだ。 「カレーの食材も持って行って良い?」 無茶な希望を口にするのは当然、”歩く胃袋”川名みさきである。 「そんなもの、作ってる余裕なんて無いに決まってるでしょ・・・。」 彼女の親友、深山雪見はため息混じりに呟いてた。 その時、外から足音がした。 足音は複数する。 「おい。今の・・・・・。」 浩之はすぐさま89式小銃を手に取り、警戒態勢をとった。 「ひぃぃぃぃぃ!」 春原も狼狽しつつもスタンガンを構えている。 ルーシーや雪見も、同様にそれぞれの武器を構えていた。 足音がドアの前で止まった。 浩之達に緊張が走る。 ガチャリ。 ――――ドアが開いた。 「動くなっ!俺達は殺し合う気はねえっ!!」 「動かないで!私達、ゲームに乗る気はないわ!!」 同時に叫び声がした。 「・・・・え?」 浩之達と、来訪者―――巳間晴香・柏木梓は武器を構えた体勢のまま、呆気にとられていた。 お互い殺意が無い事が分かると、浩之達と晴香達は早速情報交換を始めていた。 「つまり、あんた達はこのゲームから脱出するために仲間を探しているのね。」 既に構えは解き、晴香は言葉を続けた。 「私達もゲームに乗る気はないのよ。仲間になってあげても良いわよ。」 「そうか、助かる。これからよろしくな」 浩之も構えを解いた状態で答えた。 既に最初にあった緊張感は無くなっていた。 その時梓は一つ大事な事を聞き忘れていた事を思い出した。 「ねえ、あんた達柏木って名前の女の子達を見なかった? 千鶴姉に、楓に、初音っていうんだけど。」 ――場の空気が固まった。 春原が言いにくそうに口を開く。 「楓って子なら見たぞ。」 「ホント!?どこにいたの!?」 梓は目を輝かせている。 「いや、残念だが彼女はもう・・・・。」 「え・・・嘘でしょ?」 場に沈黙が訪れる。その沈黙が、春原の言葉が嘘で無い事の何よりの証明となっていた。 「楓は絶対こんなゲームには乗らない、優しい子だったのよ・・・! 一体誰が!!!」 「僕達が到着した時には彼女はもう死んでいたんだった。 犯人ももう死んでいて、その場にいたのは柳川って人だけだった。」 「!!」 梓の目が見開かれる。 「犯人が死んだなんて嘘よ!!柳川がやったに決まってるわ!!! アイツは人の命をなんとも思ってない奴なのよ!」 「でもあいつ・・・、泣いていたよ。」 「・・・そんな嘘泣きに決まってるわ!ちくしょう、殺してやる!!」 そう叫び、突然梓は駆け出した。 浩之達は慌てて制止しようとしたが、 鬼の力を制限されているとは言えその速度は常人離れしており、 浩之達が民家の門の外に出た頃には既に浩之達の視界から消え去ってしまっていた。 残された者達はただただ呆然とする事しか出来なかった。 ―――その様子を遠巻きに見ていた巳間良祐はニヤリと笑った。 「とうとう警戒を緩めたな。隙だらけだ・・・。」 一人で多数に勝つには奇襲を成功させる事が絶対条件である。 ようやく彼らに追いついた時は民家に入られており、 奇襲は厳しい状況だったが、 今まさに奇襲を成功させる為の条件が、整ったのだ。 【時間:1日目 17時30分】 【場所G-02平瀬村、民家の傍】 藤田浩之 【所持品:折りたたみ式自転車、自分と由綺の支給品一式】 【所持品Aクッキー,89式小銃(弾数22)と予備弾(30×2)&89式小銃用銃剣】 【状態:呆然】 春原陽平 【所持品:スタンガン/支給品一式】 【状態:呆然】 ルーシー・マリア・ミソラ(るーこ・きれいなそら) 【所持品:IMI マイクロUZI(残り30発)と予備カートリッジ(30発入り×5)、他支給品一式】 【状態:呆然】 川名みさき 【所持品:スタングレネード(×3)、他支給品一式】 【状態:呆然】 深山雪見 【所持品:SIG P232(残り7発)、他支給品一式】 【状態:呆然】 巳間晴香 【持ち物:ボウガン、他支給品一式】 【状態:呆然】 巳間良祐 【所持品:ベネリ M3(残り5発)、他支給品一式、草壁優季のバッグ】 【状態:戦闘態勢。ゲームに乗っている。浩之達を狙う】 柏木梓 【持ち物:不明(次の書き手さんに任せます)】 【状態:錯乱、柳川を狙っている】 - BACK