「……どうやらあの子たちは場所を変えたようね」 あれから2時間近くの時間が経過した今、柏木千鶴は先ほど自分がセリオたちと戦闘した場所に戻ってきていた。 彼女自身は先ほどと特に変化は無いが、唯一違うところといえば今の彼女は全身緑色の2速歩行するトカゲのような生命体にまたがっていた。 ―――ウォプタルというらしいその生命体は一応彼女の支給品であった。 話はスタート直後に戻る。 千鶴は自分に支給されるバッグを待っていた。 開始前の説明であのウサギが言っていた通り鬼の力を制限されてしまっていたので、できれば『当たり』がいいと彼女は思っていた。 そんな彼女の前に出現したのが自身に支給されたバッグとそれを背中の鞍に乗っけたウォプタルだったというわけだ。 最初見たときは「なっ……!?」と思わず己が目を疑ったが、 バッグの中に入っていた支給品の説明書を読んでやはりこれが自分の支給品であることを確認すると思わずため息をついてしまった。 「――『乗れば移動は快適。とても足が速いです。ただし単体の戦闘力はほぼ皆無です』ねえ………」 ……とまあそんな感じである。 彼女が詩子を襲った際素手だった理由もそれである。 (ちなみにあの時ウォプタルは少し離れた場所の木に繋いでおいた) (――何か長物があれば乗ったまま戦うことができるのですが……) そう思いながら地図を取り出した。 「今いる所がF−04ですから……近くに平瀬村がありますね………」 村なら人が集まるはず。そこを狙えば大勢の参加者を倒すことができる。 しかし、逆を考えればそのことを警戒してあえて村に近づかない者や自分と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。 (それに平瀬村は3箇所のスタート地点に囲まれている…… 人は集まっているかもしれないでしょうけど、それの半数以上がマーダー……それも銃などの火器で武装した者たちばかりだったら今の私では太刀打ちできるかしら?) そう考えた結果、さすがに今は自身から渦中に飛び込んでいくのは不味いと判断し、千鶴はまずは使えそうな武器などを集めていくことにした。 「……こちらの氷川村なら近隣のスタート地点との距離と村の面積からしてあまり人がいないかもしれませんね。 ………ウォプタルさん、少し遠いかもしれませんがお願いできますか?」 千鶴の問いかけにウォプタルはクワーッと鳴いて答えた。 「―――では行きましょう」 千鶴を乗せたウォプタルは進路を南にとり駆け出した。 (耕一さん…梓…そして楓に初音。私は多くの人を殺そうとしています。やはり貴方たちだったら今の私を止めようとしますか………?) 仮に耕一や妹たちに出会ってしまったらいったい自分はなんと言われるだろうか、そして自分は彼らも殺せるだろうか? そんな惑いを僅かに残しながら千鶴は氷川村を目指す―――― 柏木千鶴 【時間:1日目15:30頃】 【場所:F−04】 【持ち物:支給品一式】 【状況:健康・マーダー(かなり積極的)・ウォプタル(状態・異常なし)に乗って氷川村へ】 【その他】 ・千鶴のスタート地点は菅原神社(E−02) ・ウォプタルは最初からバッグから出た状態で支給された - BACK