「!!・・・誰ですか、誰かそこにいるんですか?」 沖木島診療所、その中で休息を取っていた古河親子。 今、渚は極度の緊張感からくる疲れでぐっすり眠ってしまっている。 ベッドは二台。そのうちの一つで安眠する娘を、早苗は不安まじりで見つめていた。 (これからどうしましょう・・・) そんな時だった。鍵を閉めているはずのドアが、ガチャッと音をたてたのは。 小さな診療所、はっきり言って隠れるところはほとんどない。 しかし、不安も確かにあったが、あの時は渚を休ませることを念頭に置いてしまい・・・。 ガチャ、ガチャガチャ。 早苗が声をかけてからも、ドアノブは引っ切りなしにいじられていた。 ・・・もし、このドアの向こうにいるのが・・・容赦ない殺戮者だとしたら? (ど、どうすれば・・・そうです、渚がっ!) 早苗は咄嗟に、うーんと寝言を呟く渚を抱き上げベッドと壁の脇に下ろした。 ここなら、すぐにはみつからないはずである。 (渚だけは・・・渚だけは、私が守らなくてはいけません・・・) 早苗は意味があるとは思えないが、一応ハリセンを構えてドアの方へと近寄った・・・。 「中にいるのは女性のようですね」 「上等よ・・・そいつも殺して、占拠してやるわ」 診療所前で構えていたのは、天沢郁未と鹿沼葉子であった。 先の戦闘にて祐介にやられた傷を癒すべくこの場所へ向かった二人だが、今は先客のおかげで立ち往生になってしまっている。 「こんなドア、その鉈なら簡単に壊せるんでしょうけど・・・」 葉子の武器を見て郁未は言う。 建物自体は新しいものではないので、ドアと鍵の繋ぎ目に叩き込めば破壊することはできるだろう。 だが。 ・・・この郁未の負傷自体、飛び道具が原因となったものである。 中の人物の支給武器が分からない今、早計は余りにも危険すぎた。 「どうします?」 「こっちに声かけているんだし、私達が手荒な真似しなければ多分大丈夫な気もするけど」 「・・・そうですね。自ら声を出すような愚かな行為をしている時点で、そこまで危機的な相手だとは判断はしません」 「それも罠だとしたら?」 「・・・」 「ま、その時はその時ね。自分達の運の無さを呪いましょう」 決意し、郁未はすぅっと息を吸ってから、ドア越しの住人に聞こえるよう声を張り上げた。 「すみません、怪我をしているんです。手当てをさせてくれませんか?」 「あらあら、それは大変です!」 ガチャ。 次の瞬間、ドアは驚くほど普通に開けられた。 二人が構える暇もない。 「まぁ、大変!さ、中へ入ってください。すぐに手当てしますよ〜」 「え、ちょ・・・引っ張んないで・・・」 郁未の右腕、今はタオルか何かで巻かれているもののそれは赤く染まっていて。 早苗は四の五の言わせる隙もなく、郁未の逆の手を引き中へ連れ込んだ。 「可哀想に、ばい菌でも入って痕でも残ったら大変です」 「・・・えっと・・・」 ちらっと、葉子を振り返る。 狼狽する郁未に、彼女は微笑ましそうな眼差しを送っていた。 「いいじゃないですか、郁未さん。お世話になりましょう」 「・・・そうね」 それが、元からの策でもあったのだから。 二人の様子に早苗が気づいた気配はない。 とにかく、今目の前の傷を見て「あれをしなければ、これをしなければ」とあたふたするばかりであった・・・ 古河 早苗 【時間:午後5時頃】 【場所:沖木島診療所(I−07)】 【所持品:ハリセン、支給品一式】 【状態:郁未のケガを見て慌てている】 古河 渚 【時間:午後5時頃】 【場所:沖木島診療所(I−07)】 【所持品:次の書き手さんにお任せします】 【状態:ベッドと壁の間で睡眠中】 天沢郁未 【時間:1日目午後5時頃】 【場所:沖木島診療所(I−07)】 【所持品:薙刀・支給品一式(水半分)】 【状態:早苗の行動に驚いている。右腕軽症(痛みは伴うが、動かすのに支障はない)】 鹿沼葉子 【時間:1日目午後5時頃】 【場所:沖木島診療所(I−07)】 【所持品:鉈・支給品一式】 【状態:成り行きを見守っている】 - BACK