「フライパンにモップ……そして汚い大学ノート………」 「なんか外ればかりだな………」 「うん」 「貴明さんの銃がなかったら今頃は私たち危なかったですねー」 貴明たちは各自の支給品を確認しながら氷川村を目指していた。 しかし、貴明の支給品の散弾銃――Remington M870以外は一見まともな武器はなかった。 「まあ、1つでもまともな武器があっただけでもよしとしようぜ」 「そうだね。貴くんのショットガンがあるだけでも少しは安心できるよ」 「そうだな………それにしても…………」 貴明は雄二の支給品である大学ノートの表紙の裏に書かれている英文に目を通した。 「どうだ? なんか読めそうか?」 「無理に決まってるだろ。 まあ、せいぜい最初の一文『How to use』―――これは訳すと『使い方』という意味だってことがわかるくらいだ」 「『使い方』? ノートにそんなもの書く必要なんてまずありませんよね?」 「ああ。字とか書くくらいしか使い道ないよな」 「だから雄くんが最初に言ったように誰かが落書きで書いた詩なんだよそれ」 それからしばらくはこのノートについて議論が繰り広げられたが、結局は雄二が言う「落書き」という説が最有力ということで幕を閉じた。 (『使い方』か……詩のタイトルにしては変わってるな………) 貴明は唯一訳せた最初の一文のことをもう一度思い返すと、それきりノートのことを考えるのをやめた。 なぜなら今は殺人ゲームの真っ最中。 一歩間違えればわずかな油断でも死に繋がる。したがって、油断は許されないのだ。 「みんな。村には人もいると思うけど、逆にそれを狙った連中――つまり、ゲームに乗って人殺しをしている奴らもいるかもしれない。気をつけろ」 「うん!」 「わかってるって。 俺だってまだ十分に生きちゃいないんだからな。こんなところで死ねるかって」 「そうですね。そして最後は皆さんと一緒にもとの暮らしに帰りましょう」 河野貴明 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】 【状態:健康】 向坂雄二 【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】 【状態:健康】 新城沙織 【所持品:フライパン、ほか支給品一式】 【状態:健康】 マルチ 【所持品:モップ、ほか支給品一式】 【状態:健康】 【時間:午後3時30分】 【場所:H−07】 【備考】 ・友人、知人を探すため氷川村へ移動中 - BACK