「ふん。ちょろいもんね」 「・・・・・」 川澄舞は、本来は自分に支給された物ではない日本刀を握っていた。 その持ち主、吉岡チエは目の前に立ちふさがる女の傍らでうずくまっている。 「ふーん。見たところは外れ武器かと思ったんだけど、こういう使い方もあるってことね」 舞に対峙する形、向坂環はサバイバルナイフについた血糊を払いながら不敵に笑った。 ナイフを持たない左手には爆竹の束。彼女の支給武器である。 ことの始まりは数分前。 牛丼戦争を繰り広げていた二人は、背後の殺気には気づかないでいて。 ・・・いや、舞だけは確かに反応していた。 しかし、振り向いた彼女の手には牛丼と箸。 対応が遅れてしまったことは否めない。 パアン!パパパパパァァンッ!! 衝撃音。舞もチエも、すかさず身を翻す。 「じゅ、銃っスか?!ひええぇ〜」 「・・・・・・・・・」 牛丼を足蹴にしながらも後方に避ける二人。 ・・・だが、音はしたというのに、いつまで経ってもこちらへの攻撃は来ない。 「・・・どういうことっスか?」 「見てくる。動かないで」 カチャッ。ごく自然にチエの荷物から日本刀を抜き、舞は音の出所を確かめに行く。 「き、気をつけてくださいっス」 「あら、気をつけなくちゃいけないのはあなたの方よ」 シュパッ・・・一瞬の煌きであった。 「ごめんね。本当はこのみのお友達をいじめたくもないんだけど・・・状況が状況だから。恨まないでね。」 「・・・・・・・っ、チエ!!」 舞が振り向いた時は、既に首から血を噴出すチエが全面に向かい倒れこむ瞬間であった。 駆け寄りたいが、それは隣の女が許さない。 「・・・ふふ、いいエモノ持ってるじゃない。私のナイフと交換して欲しいものだわ」 「・・・・・・・」 「ああ、でも奇襲をかけるなら、こっちの方が目立たなくていいのよね」 「・・・・・・」 「どうしようかしら・・・ふふ。じゃあ、両方私の物にすればいいのね。何だ、簡単じゃない・・・あっはははっ!!」 「・・・・・・」 「あなた、何か言ったらどうなの?おしゃべりは嫌いかしら」 「・・・許さない」 「あら。ならどうするのかしら・・・私と、争う?」 舞がかまえる、環もそれに合わせて身構えた。 その時。 「・・・はぁ、ぐふっ・・・」 環の傍らの少女、チエのうめきが外に漏れた。 「・・・・・チエ?」 「あら、浅かったのかしら。まだ息がるなんて・・・しぶといわね」 キッと、舞の睨みが一層きつくなる。 環は気にせず刃をつきつけていた。 ・・・チエの命は、刻一刻と失われてゆくことになる。 舞は、目の前の敵に集中するしかなかった。 向坂環 【時間:1日目2時近く】 【場所:G−04】 【持ち物:バタフライナイフ、爆竹&ライター(爆竹残り9個)、他基本セット一式】 【状況:貴明を探すついでに邪魔者を減らす方向に】 川澄舞 【時間:1日目2時近く】 【場所:G−04】 【所持品:牛丼一週間分(割箸付き)。支給品一式】 【状態:怒り】 吉岡チエ 【時間:1日目2時近く】 【場所:G−04】 【所持品:日本刀。支給品一式】 【状態:重傷、首の後ろを真横に切られている】 - BACK