無題




「…………あれは」
山田ミチル(112)は海岸沿いを歩いていると、故障している小型船を発見した。

「…………」
さらに、船や海岸の周辺には数名の足跡とバッグが2つあったので、誰か隠れているかもしれないと思った彼女はMG3をいつでも射てるように構えなから船に近づいた。


「これって………」
船に乗り込み船室を調べてみると、全裸の女の死体があった。
死因は頭を強く打ったことによる即死――といったところだろうか?

(この人――首輪をしていない)
ミチルは死体には自分達に付けられている爆弾つきの首輪が付けられていないことに気がついた。
(もしかして主催者側の人間……もしくは私たち参加者でも主催者側でもない別の人間が島に来ているってこと?)

ミチルは船の燃料を確認してみた。
まだまだ燃料には余裕がある。燃料漏れも起きていないようだ。

ミチルは船全体と女の死体をもう一度確認してみた。
船は外損以外特に損傷は見当たらなかった。
(――船は修理すれば動きそうだ。
そして、この人――よく見ると体中に怪我をしている。それも服ごしじゃ絶対に傷つかないような擦り傷ばかり………
おまけに――性交をした形跡もある………強姦されていたの?)


このことをもとに、ミチルはある仮説をたててみた。

(何者かがこの女性をこの船上で強姦していた……
しかし、女性は相手の隙を見て船の舵を奪い取り、その結果相手と取っ組み合いになった。
そのせいで航行がメチヤクチャになった船は偶然この島に漂流し座礁……
女性はその時に頭を強打して死亡。そして相手は……………)
ちらりと浜の方を見る。
座礁の衝撃で外に放り出されて死んだなら周辺に死体があるはずだ。
しかし、死体らしきものなどどこにも見当たらなかった。


(―――こいつはちょっとまずい?)
只でさえ女性参加者が多いこの殺人ゲーム。下手をすれば強姦魔にとってこれほど面白く、自身の嗜好を満たせるものはないだろう。

「ゲームに潜り込んだイレギュラーが強姦魔で、なおかつ殺人鬼だったら最悪かも……」
ミチルはぽつりとそんなことを呟いた。
「まさかね…」
―――しかし、彼女のその予想は実は大当たりだったりする。


ミチルはしばらくこの船に身を隠すことにした。
もしかしたら、隠れ場所を求める他の参加者がやって来るか強姦魔が戻ってくるかもしれないと思ったからだ。

(――前者であろうと後者であろうと、来た奴は誰であろうと殺すだけだ…………)
ミチルは女の死臭が僅かに満ちた船室に身を潜め、次の標的が来るのを待ち続けた。




 山田ミチル
 【場所:D-01(海岸沿い・小型船内)】
 【時間:午後3時】
 【所持品:MG3(残り35発)、ほか支給品一式】
 【状態:健康。ゲームに乗っている。船内に身を潜める】

 【備考】
・海岸の近くにあった2つのバッグは十波由真、笹森花梨のもの。そのまま放置されている
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