インターセプト3







「っ!」
「なっ?!」

一触即発に見えた場の雰囲気を拡散したのは、突如躍り出た乱入物だった。
霧島聖に対して狙いを定めていた少年も、これには後退を余儀なくされる。
その聖はと言うと、かけられた一ノ瀬ことみの声ですかさずしゃがみこみ、宙を舞うそれ等の行く末を息を飲みながら見守っていた。
はんなりとした放物線を描く小瓶、舞っている数は計三つ。
小瓶の先、ともる炎の色はオレンジがかった赤いものである。
布だろうか。火の元となっているそれは、よくみればしっとりと塗れていた。
そんな小瓶を待ち受けているのは、保健室の固い地面。

危ない。気づき、一つの舌打ちと共に膝のバネを使って立ち上がる聖の目の前、小瓶は容赦なく砕け散った。
ガラスの割れる旋律が連続して聖達の耳に入ると同時、揺れる炎はたちまち周囲へと広がっていく。

(随分と危ないことを、してくれたものだな……っ!)

燃え上がる炎が広い範囲を陣取るのに、時間はそうかからないだろう。
古い建物であるこの鎌石村小学校、木造ではないが周囲を舞う大量の埃がここにきて最大の火付け役になっていた。
炎の規模は、ますます膨らんでいくに違いない。
まだ調べきっていない場所からおかしな薬品が出てきたら、厄介なことになる。
必要なのは、早めの脱出だ。
そのためにも聖達はまず、対峙しているこの少年を何とかしなければいけない。

(……! そうだ、あれなら)

素早く周囲を見渡した聖が目に付けたのは、先ほどまで相沢祐一が眠っていたベッドだった。
ベッドを仕切るためにかかっているカーテンには、小さな炎の花が虫食いの様になって咲いている。
その光景から一つの閃きを得た聖は、瞬間、そこに向かって一気に駆け出していた。
立てられた派手な地鳴り、聖の奇行に少年もすぐ気づく。
手にしていた機関銃の先端を、少年は躊躇することなく聖へと向け、その引き金に指をかけた。

「駄目。撃たせない」

すかさずスカートのポケットに手を突っ込んだことみが、新たな武器をその手にする。
瓶を放った後隅の方へ逃げていたことみが取り出したのは、少年も一度痛手を負っている、暗殺用十徳ナイフである。
いくらか練習でもしていたのだろう、ことみはそこそこ慣れた手つきで備え付けられている吹き矢の吸い口に唇を寄せると、間髪なくセットされていた矢を少年に向け打ち込んだ。

「おっと!」

鋭い棘は、構えていたMG3を今正に発砲しようとしていた少年へと、真っ直ぐに向かって飛んでいく。
しかし軌道が読みやすかったからか、少年が矢を避けるのは容易いことだった。

「ことみちゃん、君の相手は次だから。少しだけ我慢してて、ねっ!」
「きゃっ」

スナイパーの如く少年を遠方から狙っていたことみの真横、走る銃弾は牽制か。
敢えて致命傷を避けているかのような動き、少年は小さな悲鳴を上げ逃げ惑うことみを楽しそうに見つめている。
そんな二人を尻目に、聖はと言うとさっさと目的の場所へと辿り着いていた。
聖からすれば、ことみが少年の気を引き付けてくれたおかげで事がスムーズに行ったことになるだろう。

(すまないことみ君、もう少しだけ耐えてくれ……っ)

心の中でことみに対する謝罪を繰り返しながら、聖は少年の気がこちらに向かないうちにと行動を起こす。
ベアークローで布地を裂かないようにと、聖は気をつけながら炎のともるカーテンを掴んだ。
足に踏ん張りをかけながら聖が全身の力でそれを引っ張ると、カーテン地が固定されている鉄のバーがミシミシと上下に揺れる。
バーの上部、何箇所にも渡りしっかりと括られているカーテンがこれで外れる気配はない。
それならばと。
今度は敢えて突き刺すように手を突っ込み、聖は装着したベアークローでしっかりとした布地を引き裂いていく。
聖は瞬く間に、無残な姿と化したカーテンを自身の手に堕とした。

一箇所にまとめられたことで、炎の移りは今まで以上の速度を持って進行する。
小さな花は、やがて大きな松明のように変化していくだろう。
形が崩れないようにと、聖はまだ火のついていない残っている布地を一箇所に集め、幾重ものしっかりとした固結びを作った。
こうしてできた塊は、まるでブーケのようにも見える。
炎のともる、真っ赤な花束。狙っていた物の完成に、聖の顔にも笑みが浮かぶ。

「せんせっ、駄目っ」

聖が冷水を浴びせられることになるのは、その直後だった。
か細いのは相変わらずなものの、ことみの声には今まで以上の焦りが含まれていただろう。
はっとなる。聖の脳裏に走る予感が、警告音を打ち鳴らした。
すぐ様泳がせた聖の視線、膝をつき、身を乗り出すようにしたことみの形相が一瞬移りこむ。
その先、視線の終末点に彼はいた。
ことみを相手にしていたはずの少年と目が合い、聖はしばしの間彼と静かに見つめ合った。

燃えるカーテンの熱の影響ではない汗が、聖の額をしとどに塗らす。
少年の口元は、緩んでいた。
今ならはっきりと伝わる、その邪悪さ。

息が詰まる。
取れない身動き。
ちりちり、ちりちり。
手にしていた布地部分までついに炎が侵食してきたが、聖は固まったままだった。

少年の手にある、凶器。
矛先は聖へと、再び向けられている。
その姿勢は、既に固定された後だった。
少年がトリガーを引けば、機関銃にセットされた銃弾がたちまち聖を蜂の巣にするだろう。

「それじゃ、さようなら。君は本当につまらなかったよ」

最期の言葉、間に合わなかったということ。
その非情さに、聖は強く唇をかみ締める。
諦めることなんてできない。
できっこなかった。
聖は強く、少年を見据える。
強く強く。視線で殺せるくらい、じっと少年を刺し続ける。

少年という一つの点に注がれる、二つの線。
聖の眼差しともう一つ、それはことみが送るもの。
少年の追随で、彼女の足元には焦げた穴が複数ある。
そこでぺたんと、ことみは尻餅をついていた。
腰が抜けてしまったのか、彼女の下半身はぴくりとも動かない。
静止したままことみは頭をフルに回転させ、自分の持ち物の中で何かこの場を打開できるものがないか、必死になって考える。

先ほどことみが即興で作成した火炎弾の複製は、材料の関係でもうできない。
床に転がっていた空き瓶も、相沢祐一の手当てで使用したこともありただでさえ残り少なかった消毒用のアルコールも、ことみは全て使い切ってしまっていた。
持ち込んでいた100円ライターは残っているが、それだけでは無用の長物である。

ぎゅっと。掴んだままの十徳ナイフを、ことみはしっかり握りしめた
これでどう応戦できるか。
考える。
考える前に行動を、とも思うが、ことみの足は彼女の言うことを聞こうとしない。

言葉が出ない。
ことみの頭が、真っ白に、なる。

直後、数発鳴った銃声音。
驚きと恐怖でびくっと身構えたことみは、聞きたくないと言った風に頭を抱え込むとそのまま小さく丸くなった。
ふるふると震えることみの様子は、まるで小動物である。
今のことみに、果敢な聖をサポートしていた影はない。
切れかけた緊張の糸が、ことみを絶望の淵に追い込んでいく。

「がっ!」

低い低い呻き声。
襲われた痛みに対するものだろう。
断続的に漏れる洗い息は、ことみの元までしっかり届いている。
その痛ましいこと。
ぎゅっと目を瞑り、ことみは自身を殻の中へと逃がそうとする。
その間も、騒音はずっと続いていた。
駆ける音、逃げる足音。

「このっ!!」

銃声、銃声。
今頭を上げれば、自分にも空洞が作られるのだろうか。
自身が作り上げた想像に身を震わせることみ、しかし彼女の耳はその違和感をしっかりと捕らえていた。

(……?)

恐れる心が一端引く、それはことみの頭がしっかりと働いている証拠になるだろう。
ことみは気づく。
冷静になったところで、ことみの解答はすぐに用意された。

……発砲音は、今も尚ことみの背後から発せられている。

ことみは少年と距離を取り、広瀬真希や遠野美凪が逃走に用いた校庭に続く窓付近に位置していた。
そんなことみの後ろに、このタイミングで少年が回り込むことは現実的に考え不可能だ。

「立ちなさい! そのまま窓から逃げていいからっ!!」

誰かの叫び声、それと同時に保健室の床ががなりを立てる。
人の気配に顔を上げようとすることみだが、その前に自身の頭を抱えていた腕を強い力で引っ張り上げられた。
丸く固まっていたことみの戒めが解かれる。
開かれたことみの視界、眩しさを感じる中映りこんできたのは、鮮やかに揺れる真っ赤な炎だった。
燃える保健室とは、また別の紅。

「つつ……さすがに腕が痛いわね」

苦言を漏らしながらも、手にする拳銃を下ろそうとは決してしない。
そうしてまた駆け出した少女、向坂環。
もう一つの『赤』が、いつの間にかそこに存在していた。





開け放たれた保健室の窓にかかる白いカーテン、その隙間から見えたもの。
聖やことみが追い詰められていた様は、遠目にいた環にも容易く伝わっていた。
まだ炎が移っていない分、部屋の中とのコントラストは環からすると不気味としか表現できないだろう。

何とか保健室の窓際まで辿り付いた所で、環は迷うことなく引き金に手をかける。
しっかりと足場を固めるが、彼女も拳銃を撃つのは初めての行為だ。
せめて威嚇の意味にでもなってくれればと、環は足を止めている少年を狙い二発の銃弾を撃ち放った。

「っ!」

反動で震える体を耐えさせながら、環はそれでも見据えた視線の先で自分の功績を確かに知る。
明後日の方向に跳んでいったと思いきや、銃弾の内一発は見事少年に被弾していた。

(初めてにしては、中々のものじゃないっ!)

ボタボタと垂れていく血が、保健室の地面を違う紅に染める。
出血は、少年の肩口からだった。
掠めるといったレベル、骨までは達していないであろうが肉を抉り取られたという痛みに少年の眉は不快気に寄せられている。
これには、さすがの少年も予想をつけられなかったのだろう。

滴る血をそのままにしながら、少年はすぐ様その場を離れようとする。
保健室の中を駆け、的にならないようにする少年の身から零れていく体液を追うように、環の銃弾は開け放たれた保健室の窓から飛ばされてくる。
だが環の射撃の腕は決して、精巧なものではない。
虚をつかれた初動以外、少年が銃弾に触れることももうないだろう。

それでも環が少年のテンポを崩すことには、成功したのだ。
これで少年の目は、再び聖から外れることになる。

聖は諦めていなかった。
全く諦めていなかった。
この瞬間まで、ずっと待っていた。
少年に隙が生まれるこの時を、聖はずっと待ち続けていた。

時間にして、一分にも満たないこのどんでん。
今も尚ちりちりと自身の両手を焼き続けている布束を、聖は形を崩さないようそっと持ち上げた。
そのまま、ゆっくりと振りかぶる。

「……っ」

燃え盛る炎のブーケの熱による発汗、目の痛みが細くする視界。
耐えながら聖は、煙や墨でむせないようにとひっそりと呼吸を止める。
集中。狙いを定めたところで。
目標が足を止めようとするその瞬間、決して逃すことはなく。
聖は渾身の力で、その炎の塊を少年に向け投球した。

「あまり僕を、舐めないでくれるかな」

少年の声。そこに危機感は含まれていない。
環との応戦で疎かになっていたとも思われる少年のチェックだが、決してそんなことはないとでも言いたいのか。
迫り来る聖の炎に対しても、少年は冷静だった。

「ふっ!」

少年は炎の塊を体で受ける前に、自らの手で叩き落とした。
高速の手套は、常人で追うことができないレベルの速さを持つ。
炎の触れた場所に火が当たるが、少年がダメージを受けた様子はない。
絶望の色。ことみの表情。
苛立ちの音。環の舌打ち。
しかし聖は微笑んだ。にやりと意地悪気に口元を歪ませた。
むしろ聖の狙いは、その後だった。

「?! ごほっ、がっ、はぁ……っ」

強い力で地面に叩きつけられたカーテンの中、充満していた細かな煤はこの衝動で一気に撒き散らされることとなる。
もくもくと上がる黒い煙の中、少年は視界を覆うレベルの塵に包まれた。

「ごっ、ごほ、ごほっ!! ごはぁっ、が、がはっ!!!」

少年の堰は止まらない。
地に落ちた塵も踊り続ける、膝をついた少年の堰がかかっているのだろう。
時間がかかったからこその、絶大な効果がそこにある。
舞い上がる煤は、そのまま聖にとって勝利の紙ふぶきとなった。


          ※     ※     ※


火は、校舎の一部にも引火していた。
このままだと、老朽化した校舎を丸ごと飲み込む可能性も高いだろう。
保健室も薬品は多いが、もしあるとすれば理科関係の教室の方が幾分も危なかった。
この場から、急速に離れなければいけない。
遊具も何もない広いだけの校庭に佇みながら、聖は背後の保健室をそっと振り返った。

「せんせ……」

呼ばれる声で視線を戻そうとした聖の胸に、ボンボンのついた愛らしい二つ結びを揺らしながらことみが飛び込む。
ここに来るまで聖が何度も聞くことになった、ことみが呼ぶ聖自身への呼称。
その言葉に含まれた安心が、聖の心を軽くする。

「よく頑張ったな、ことみ君」

ふるふる。二つ結びが左右に揺れる。
ことみは顔を上げることなく、ぎゅっと白衣を握り締めながら聖にしがみついていた。
押し付けられたぬくもりの小ささに、聖は今は亡き妹の姿を連想させた。
この命を守れてよかったという実感が、聖の内にもじわじわと流れていく。

「さっさとここから離れましょう。あの男が追いついてくるかもしれないわ」
「そうだな。……君も、助かった。君がいなかったら私は生き延びていられなかったと思う。礼を言おう」

名も知らぬ猫目の少女から飛ばされた愛らしいウインク、茶目っ気溢れる環の動作に聖もようやく肩の荷が降りた気持ちになった。

「先生! ことみっ!!」

遠くから、これもまた聖にとって慣れ親しんだ少女達の声が響く。
目をやれば、必死の形相でこちらに向かってくる少女の姿がすぐさま聖の視界に入った。
走り寄って来るのは広瀬真希、それに遠野美凪といった先に聖が逃がした少女達、その後ろからは遅れながらも相沢祐一がついて来ている。
先頭を駆ける真希はそのまま真っ直ぐ聖へと駆け寄ると、ことみと同じようにしかと彼女にしがみついた。
タックルのような勢いに押されながらも、聖は倒れないようにとしっかり足を踏ん張る。
ここに来てまで疲れた体を酷使しなければいけないことに、聖は思わず苦笑いを漏らした。

「先生……先生……っ」

聖の様子に気づかないのか、真希が半分泣いてでもいるようなか弱いうめき声を零す。
恐らくこの小ささでは、聖本人や、真希の隣でまだ聖に引っ付いているだろうことみにしか聞こえていないだろう。

「……馬鹿。この期に及んで、戻ってくる奴があるか」
「だ、だって! だってだってだってっ!!!!」

呆れたような聖の言葉に、がばっと真希が顔を上げる。
そこで崩れそうになっていた真希の表情は、ぽかんと、呆けたものになった。

「大馬鹿者」

頭に置かれた聖の手の温度、そのまま優しく撫でられ真希は思わず押し黙る。
聖の手つきには、柔らかさが満ちていた。
聖の手は、火傷で爛れ痛々しいことになっている。
しかし聖はそれをあくまで真希に感じさせないよう、気づかせないよう。
細心の注意を払い、真希の髪を撫でていた。

「先生……」
「すまないな。心配をかけた」

真希の気持ちが、聖は素直に嬉しかった。
頼って貰え、その期待を反することなく終えられたことが聖は本当に嬉しく思えた。
見回せば、誰も欠けることなく今またこうして集まることができているという、その事実。
皆聖よりも年下の、幼い少年少女達。
愛くるしい聖の亡き妹と、同じ年代の少年少女達。

聖にとって、守れたというその事実こそが大切なものだった。
一番だった。

全てが微笑ましく、聖はまた苦笑いを浮かべる。
歪ませた頬には、聖にとってありったけの充足感が満ちていた。
守れなかった亡き妹、守ることができた可愛らしい仲間達。

瞳を瞑る。
聖の瞼の裏で、霧島佳乃も微笑んでいた。
聖と一緒に、微笑んでいた。





―― その時がなった発砲音を、誰が予測できただろうか。
 




放たれた機械音は断続的で、仕込まれた弾が尽きるまで終わることはなかった。
聖の白衣が塗れる。白い衣の背面が、真っ赤に染まる。

飛び散った赤は、ことみの顔面にも飛沫となって降りかかる。
聖の体を貫通した弾で怪我を負う寸前、ことみは再び強い力で腕を引かれていた。
先程と同じようにことみの手を引いた環は、そのまま小さなことみの体を抱え込むと転がるようにしてその場から距離を取る。

「真希さんっ」

駄々漏れになる体液は、ことみだけでなく真希のオフホワイトのセーターをも染めてくる。
固まる真希の体に自身を当て、美凪は彼女の体勢を崩した。
聖にしがみついていた真希の体は剥がれ、自然と地に伏せる形になる。

ことみと真希という二人の支えを失い、聖はそのまま長い黒髪を宙に舞わせながら、前のめりに崩れていく。
溢れた少女の聖の血液が、地面にどくどくと流れていく。
それが砂地に染みていく様は、まるで地が聖の生気を吸い取っていくようにも見えた。

「……っ」

何かを耐える息遣いが耳に入り、真希はまだぴくぴくと細かく震えている聖から美凪へと目線を移した。
真希の代わりというわけではないが、流れ弾の被害は美凪に向かっていったことになる。
弾は、美凪の柔らかな右頬を掠っていた。
一筋の傷は美凪の頬に、新たな血を流させる。
真希は見つめる。そんな赤い光景を、無言で見つめる。見つめるだけ。
香る生臭さに、真希の臭覚は既にいかれていた。
それと同時に麻痺する思考回路、銃声が止んでいたことが真希の命を救っていただろう。
今の真希には逃げる気力等、全くの皆無であったのだから。

「だから言ったじゃないか。舐めないでくれって、さ」

地面を弾むMG3のがちゃんという立てられた音に、面々は静かに息を呑む。
元々全身黒ずくめだった彼の相貌は、煤の汚れでさらに隙間ない闇をそこに表現していた。

「お、前は……」

美凪に駆け寄ろうとしていた、祐一の足が止まる。
彼の正面に佇む男の手には、新たな拳銃が握られていた。
何処かに隠してでもいたのか、先程までは持っていなかったはなかったはずの屈強な盾を手に、男は再び彼等の前へと立ち塞がる。

「死ねばいいよ、全員」

少年の目は、笑っていなかった。




【時間:2日目午前8時05分】
【場所:D−6・鎌石小中学校・中庭】

一ノ瀬ことみ
【持ち物:主催側のデータから得た印付の地図、毒針、吹き矢、高圧電流などを兼ね備えた暗殺用十徳ナイフ(吹き矢使用済み)、支給品一式(ことみのメモ付き地図入り)、100円ライター、懐中電灯、お米券×1】
【状態:環に抱きかかえられている】

霧島聖
【持ち物:ベアークロー、支給品一式、治療用の道具一式、乾パン、カロリーメイト数個】
【状態:死亡】

少年
【持ち物1:強化プラスチックの大盾(機動隊仕様)、注射器(H173)×19、グロック19(15/15)】
【持ち物2:支給品一式、レーション2つ、予備弾丸12発】
【状況:ことみ、環、祐一、真希、美凪と対峙・効率良く参加者を皆殺しにする】

向坂環
【所持品:コルトガバメント(残弾数:15)・支給品一式(食料少し消費)】
【状態:ことみを抱えている】

相沢祐一
【所持品:S&W M19(銃弾数4/6)・支給品一式(食料少し消費)】
【状態:鎌石中学校制服着用(リトルバスターズの男子制服風)、腹部刺し傷あり(治療済み)】
【備考:呆然・勝平から繰り返された世界の話を聞いている】

広瀬真希
【持ち物:消防斧、防弾性割烹着&頭巾、スリッパ、水・食料、支給品一式、携帯電話、お米券×2 和の食材セット4/10】
【状況:呆然】

遠野美凪
【持ち物:消防署の包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、支給品一式(様々な書き込みのある地図入り)、特性バターロール×3 お米券数十枚 玉ねぎハンバーグ】
【状況:呆然、右頬出血】


MG3(残り0発)は校庭に放置
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