世界は見えぬ翼




河野貴明(042)達はH-07の分かれ道まで来ていた。
「……どっちに行く?」
「……どっちにしようかねぇ」
「……どうしようか」
「……どうしましょうか」
仲良く頭を捻っていた。
「確認しよう。今の俺たちの武器は」
「はーい! あたしフライパーン!」
「俺はガントレット」
「私はモップですー」
「そして俺が工具セット、と」
各々微笑を浮かべつつ顔をつき合わせて、
「「「「はぁ〜〜〜〜〜〜」」」」
溜息一つ。
笑うしかない。
四人揃って戦闘向きの武器が一つもないのだ。
戦闘する気はさらさら無いものの、やる気な人が現れた時にはったりかます事も出来やしない。
「ここで右に行くか左に行くかだけど、左に行けば村が在る」
「村には人も集まるだろうけど、それを狙った『参加者』も多分集まるよねぇ」
「かといって俺らに『参加者』を撃退できる能力なんか無いし」
「そうはいっても右に行ったところで何も無いしね」
「今のうちに覚悟を決めて左に行くか、取り敢えず逃げて右に行くか」
「こうして挙げると右に行ってもいい事無さそうなのはわかんだけど……」
「……怖いんだよなぁ」
「ねぇ……」


「「「はぁ……」」」
再び、溜息。
「はわ〜。みなさん、すごいです〜。よく考えてますねぇ」
三人は無言でマルチを凝視して、
「「「はぁ……」」」
三度、溜息。
「しゃあない。多数決で決めよーぜ。このままじゃ決まらん」
「そうだね。新城さんもマルチちゃんもそれでいい?」
「はいっ!」
「いいけど、割れた時はどうするの?」
「そん時考える。じゃあ、右がいい人」
手が、二つ。
「……割れたな」
「……そうだな」
上がった手は雄二と沙織。
「なんで二人は手を上げたの?」
「やっぱり、怖いし……」
「ガントレット持ってる分俺が盾になる気がしてな。お前らは何で?」
「村とかに行くんなら早いほうがいいと思うんだ。右に行ったところで参加者に会わない保証は無いし」
「きっと、話せばわかってくれますよー」
「それにずっと何処にも行かないわけにはいかないだろ。いつか行くんなら早いほうがいいんじゃないか?」
雄二はそれを聞いて頭を掻く。
「ああー、分かったよ。お前らのが正論だ。仕方ねぇから喜んで盾になってやるよ」
「はぁ。しょうがないわね。三対一じゃあたしの負けか。じゃ、村に行きましょうか」


「ちっ、せめてこのモップがモップ型ライフルとかだったら……」

カチッ

「「「「あ」」」」
モップの先端が折れ曲がって取れた。
断面から黒い穴が見えている。
「…………モップ型ライフルだったな」
「…………ああ」
「雄くん、すごーい!」
「すごいですー」
「でもこれ、威嚇になるのかな……」
「あ……」
「モップ突きつけて『これはモップ型のライフルです! 撃たれたくなかったら逃げてください!』ってか?笑い話にしかなんねぇよ……」
「本当だけに余計に困る……」
「しかもこれ木製だろ? どう見ても。一発威嚇射撃で撃って壊れたら元も子もねぇ……」
「砲身は鉄みたいよ?」
「だからって今試し撃ちして壊れたら俺ら唯の阿呆じゃん……試す気にもなんねぇ……」
「第一弾の詰め方も分からないしね。と言うか詰め替えできるのか?」
「あの、鞄の中にはもう弾は無いみたいです」
「何発撃てるかも分からないライフル……」
「頼りになるんだかならないんだか……」
「モップよりはましじゃない」
「そうだね……」


「みなさんのもこんな風になってたりするんでしょうか?」
「「「あ」」」
三人は大慌てで自分のランダムアイテムをチェックした。

しかし 何も 見つからなかった。

「はぁ…………じゃ、行くか」
「ああ……」
「うん……」
「はい!」
一向は、西へと歩き出した。




河野貴明
【持ち物:デイパック、水を少々消費。工具セット、モップ型ライフル(マルチから託される)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

向坂雄二
【持ち物:デイパック、水を少々消費。ガントレット(手甲)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

新城沙織
【持ち物:デイパック、水を少々消費。フライパン(板の部分にカルボナードが埋め込まれていて上手くいけばライフルも跳ね返せる)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

マルチ
【持ち物:デイパック】
【状態:健康、元気】

共通
【時間:午後三時半時頃】
【場所:H-08】
【状態:氷川村を目指す、ゲームには乗らないつもり、知り合いを探す】
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