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霧雨ニ響ク鳥ノ詩





 ぽつぽつ、と鈍色の空からは雫が降り注いでいた。
 どんよりと立ち込めている暗雲はまだ姿を見せているはずの太陽を遮り、夜の帳を早めている。
 まだそんなに雨粒の数は多くない。
 今からすることの障害にはならないだろう、と前髪につく水滴を払いつつ、国崎往人は川澄舞の姿を待っていた。

 「少しやることがあるから、待って欲しい」と言ったきり、かれこれ10分が経過しようとしている。
 一体何をやっているのだか、と疑問に思いながら手持ち無沙汰に護身用の投げナイフを弄ぶ。
 まさか、未だに自殺を考えている……ということはないだろう。
 寄り添っている間に感じた安堵の雰囲気は、間違いなく本物だ。
 これからどうしていくかについては結局、明瞭な返答は得られないままだったが生きていくという意志は見える。
 過程が見えていないだけだ。なら、それはじっくりと探していけばいい。
 その間の手伝いくらいはしてやろう、そこまで考えて、今までの自分なら考えもしなかっただろうなと思い、往人は苦笑する。

 母さん、俺は今度こそ間違えずにいられると思う。
 ……この姿を、見せたかったな。

 記憶の片隅にしかなく、顔もぼんやりとしか思い出せない母親の輪郭を空に見ながら、往人は目を細める。
 まだ家族を思うほどには情が残っている。
 人らしさが残っていることに安心感を覚えながらそろそろ呼びに行こうか、と思ったとき、タイミングよく舞が玄関をくぐって出てくる。
 噂をすれば……ではないか。

 何をしていたんだと尋ねようとして、舞の手に小さな箱が納まっていることに気付く。
 荷物の整理をしていたときにはなかったものだ。往人はまずそちらに興味を移し、それが何かと尋ねる。

「マッチ」
「……今時、まだそんなものがあるんだな」

 簡素に答えて、舞は抱えていたデイパックを地面に置き、マッチ箱だけを手に持った。濡れないように手のひらで隠しながら。
 何に使おうとしているのかはすぐに察しがついた。
 雨粒の匂いに紛れて漂ってくる刺激臭。どこか硬い舞の表情。
 それを止める気はなかったが、確認する意味も込めて往人は問いかける。

「いいのか」
「……構わない。これが、私なりの結論だから」

 その声は諦観ではなく、決意のようなものがあった。
 そうか、と答えて往人はそれ以上何も言わなかった。
 けじめだと言うのなら、手を差し伸べる必要はない。
 一歩身を引いて舞のするがままにさせることにした。

 同時、シュッと軽い音がして暗くなりつつある平瀬村に一つ、小さな灯りが燈る。
 煌々と瞬く光は儚く、今にも消えてなくなりそうに見えたが、しっかりとした炎を纏っていた。燻らない強さがあった。
 しばらく舞はそれを見つめ、やがて意を決したように火を民家の中に投げ込んだ。
 途端、轟と凄まじい炎の波が膨れ上がり数瞬の間に民家を駆け巡る。

 壁材が灼熱に溶かされ、化学繊維がパチパチと悲鳴を上げ、木材が崩れ往く。
 実際には民家の全身が炎に包まれるまでは何分かの時間を要しただろうが、往人にはひどく短い時間のように思えた。
 まるで炎はこの時を待っていたかのように踊り狂い、紅蓮のコーディネイトを施していく。
 熱気に押し上げられた大気は風となり、焼けて脆くなった部分を吹き飛ばす。
 既に燃え尽きて灰になった一部が雨だというのに宙を舞い、鈍色から漆黒へと変わりつつある空へ同化してゆく。
 火は勢い益々盛んに全てを焼き尽し、所々でガラスが割れはじめる音が響きだした。

 死者の悲鳴だとは思わなかった。現場にも立ち会ってない自分が思うのはあまりに勝手かもしれないが……
 だがそれでも生き延びろ、生き延びろと声を張り上げているように往人は感じたのだ。

 轟、と風が凪いだ。
 ギリギリと民家が音を立て、僅かにその姿を変え始める。墓になろうとしているのだ。
 なおも強くなる熱風は雨などものともしていないかのように二人を撫で付ける。
 行け、もう自分達は使命を果たしたのだと、背中を押すように。

「……まだ、やる事があるな」

 もう少し待ってくれ、と心中で笑いながら往人は腕を捲くり、ナイフを逆手に持って刃をむき出しになった腕へと向ける。
 あれが舞の決別なのだとしたら、これが俺のやり方だ。
 ぐっ、と深く切り過ぎないように力を篭めて、往人はナイフを押し付ける。

「往人? 何を……」
「大丈夫だ、リストカットなんかじゃない」

 その様子を見た舞が慌てたように止めようとするが、言葉で制し、僅かに苦痛と流れ出る血を感じながら続ける。
 それでも不安なのか、心配そうに見つめる舞を横目に見つつ、往人は一文字ずつ言葉を刻んでいく。

 『Don't forget』

 ……これくらいの英語は知っている。多分スペルミスもないはず。……多分。
 ともかく、これが往人なりのけじめのつけ方だった。
 忘れない。事実を事実として受け止め、その上で進んでいくしかない。
 逃げない。逃げるわけにはいかない。そんな意味も篭めて。
 雨と混じった血が赤い河となって流れて行くのを眺めながら、往人は捲くっていた袖を元に戻した。

「……」
「どうした?」

 もの言いたげな視線を寄越す舞に、往人はなんの気はなしに尋ねてみる。
 反応して、舞は口を開きかけたが何か思うところがあったのか、少し逡巡して何でもない、という風に首を振った。
 表情に変化が少ないため何を考えていたかは読み取れなかったが、バカにしていたわけではないだろう。
 ということは、スペルミスはないな。文法ミスもなさそうだ。
 そんなくだらないことでホッと心中でため息をつき、本当に何も言わないのを確認して、行こうと促す。

「あ、待って」
「今度は何だ?」
「気付いた。荷物の整理をしていない」
「……そう言えば、そうだ」

 家を出る前にやっておくべきだったことを、どうして今まで気付かなかったのか。
 色々あったから仕方がなかったとはいえ、肝心な所をボケすぎだろう俺、と往人は嘆息する。
 だが今更何を言ってもどうにもなりはしない。さっさと行動に移して要領よくやるべきだ。

「一旦全部出すか……確か、六人分はあったな」

 言いながら、持ってきたデイパックを次々と開けて中身を取り出していく。
 流石に、とでも言うべきか六人分もあれば武器の量も多く加えて高性能なものが揃っている。
 軽く武器庫状態だな、と思う一方、それだけの命の重みを抱えているのだとも実感する。

 ともかく、種類は豊富だった。
 銃だけでもショットガン(レミントンM870)、拳銃(SIG P232、ワルサーP38)が二丁、鉄扇、トンカチ、フライパン、カッターナイフ、投げナイフが四本。……と、謎のスイッチが一つ。
 レミントンに関しては予備弾薬は十分であるが、他の二丁の拳銃はほぼ残弾が皆無であることが判明した。
 往人の手持ちの38口径弾は転用できるかどうか分からないので、それなりに詳しい人間に出会えるまでこのままにしておこう、ということで結論を得た。
 謎のスイッチであるが、全く以って謎の代物であり、説明書を見ても何が何やらという調子で下手に使うのも躊躇われた。
 見る限りでは無線機のような形状であり、恐らく電波か何かを送信するのであろうアンテナが見受けられるが、やはり見渡しても何も分からない。
 かと言って壊すのも勿体無い気がしたので、これも保留。
 残りは白兵戦に用いる近接武器、と分配を考えようとしたときだった。

 燻る雨と煙の向こう、泥のように濁った気配が霧の中に出現した幽鬼の如く立ち込める。

「……」

 耳を凝らさなければ聞こえないくらいの掠れた声が湿った大気に伝わったと同時、往人は無用心だった、と舌打ちし……
 電撃的に舞の腕を引っ張り、身体を手繰り寄せる。
 その空間を、雨の冷たさよりも冷酷に、ボウガンの矢が潜り抜けていった。

 考えてみれば、轟々と火を上げ続ける民家が目印にならないわけがなかったのだ。
 周囲が暗さを増しつつあるなら、尚更。
 迂闊だったと己の注意不足を恥じつつ、集中を取り戻した舞が地面に置いていた日本刀を手に取り、すっ、と構えるのを横目にしながら、往人もコルトガバメントカスタムを向ける。
 互いの距離は約10メートル前後。
 地面のコンディションは劣悪という程ではない。濡れた草などに足を取られないようにすれば、問題はない。
 その判断を三秒足らずで下し、眼前に迎える敵の姿を見る。

 小柄な少女だった。
 ただ、その格好はスクール水着に制服と、この島には似つかわしくないような異様さを放っている。
 だがそれより、何より異常だったのは……

「何で避けるんだよっ、なんでっ、なんで、なんで……っ!」

 ――雰囲気。
 何かに取り付かれたかのような、余裕のない瞳。
 執拗なまでに向けられる獰猛で、我侭な殺意。
 暗く水底に沈んだかのような、虚ろな叫びを上げて。
 朝霧麻亜子が、歯を噛み締めて、ボウガンを持ち上げた。

     *     *     *

 何かが、音を立てて崩れ落ちていくのがはっきりと自分でも感じ取れた。
 目の前が真っ白になる……その表現が、間違いだと分かった。
 虚無だ。白ではなく、そこは無に満ちていた。
 自分の存在すら感じられないくらいに、人事不省になるのではないかといっても差し支えない足取りで、朝霧麻亜子はよろよろと歩く。
 どん、と壁に身体が当たって、はじめてそこに自分の身体があったのだと認識するほどに、麻亜子は何も考えられなくなっていた。

「嘘だ……こんなの、冗談だろ……?」

 否定する声は、思ったよりも白々しく感じられた。
 用意された台詞を喋っただけの、空虚で中身のない声。
 あるいは――放送で死んだと伝えられた、久寿川ささらと河野貴明の一件を受け入れようとしている、自分の頭に対して言ったものかもしれなかった。
 そして、そのことは麻亜子が完全なる『殺人鬼』へと変貌したことをも証明している。

「違う、違う違うちがう! あたしはっ、そんなことのために殺してなんかない!」

 誰も問いかける者もいないのに、麻亜子は必死に、髪を振り乱す勢いで反論する。
 だが、聞こえる声は止まらない。

 お前はもう、殺人を愉しむ餓鬼なんだ。人の悲鳴を好み、戦いと憎悪を快楽とする阿修羅なんだと、囁き続ける。
 受け入れろよ。お前の目的は友達を救うことじゃない、血を啜りたいだけなのだろう?

 ……狂ってる。何もかも。

 そんな押し問答を繰り返す自分が、残酷に奪っていくこの世界が、
 親友だった二人の死を、悲しみもしない、心が。
 一番信じられないことだった。
 どんなことがあっても大切にしようと、守り通そうとしてきたはずなのに、大好きだったのに、涙の一滴も流していない。
 人を殺し続けた結果が、これだと言うのか。

 『冗談だろ?』

 この一言に、全てが詰まっていた。
 あらゆる事が冗談としか思えない出来事。
 変わってしまった自分、変えられない現実、変えられぬ過去……
 紛れもない真実であり、空想のような事実。
 これで、ここから、どうしていけばいいのだろう。

 夢の続きだった。
 境目のない虚無を歩き、殺しを肯定する自分と、否定する自分に喘ぎ、出せぬ結論に苦しむ。

「……いや、まだだ、まだ方法はある……」

 放送の内容は、辛うじて覚えている。
 いや、覚えていなければならないという意思が、優勝しなければならないという意思が働いていたからなのかもしれない。
 どちらでも良かった。問題は、残り人数のみ。
 二人まで生き残れることも、二人とも願いを叶えて貰えることも、生きて欲しいと願った二人がいなくなった瞬間から、意味を為さない。
 全く因果なものだ。これを仕組んだのが運命だというのなら、その運命をズタズタに引き裂いてやりたいところだった。

 乾いた笑いを上げながら、麻亜子は指折り、生存者数が30人強にまで減っていると認識する。
 残りはそれだけ。それだけ殺せばいい。
 骨が折れ、肉が千切れ、悪鬼羅刹に身をやつそうとも、一人残らず屍に変える。
 どうせそう望まれているのなら、そうしてやろうではないか。
 誰かが哂う。主催者が、恐らくはいるはずであろうこの殺し合いの協賛者も。
 結構。掌で弄ばれようが、それでもやり遂げねばならないことがある。
 邪魔する人間は全て皆殺し。
 許しを請い、慈悲を願い、額を地面に擦り付けて涙を流し生を懇願しようが、冷酷に切り捨てるのみ。
 今まですら甘すぎた。
 既に救いは無い。求められるはずも、手が差し伸べられるわけも無い。

 残された手段はただ一つ。
 地獄へ自ら堕ち、宝物を奪い、蜘蛛の糸を辿り戻ってくるしかない。
 即ち――優勝して、二人を生き返らせてもらうこと。
 これさえ叶えられれば、たとえその後自分が死んだとしても、想像を絶する苦痛に苛まれ、陵辱されたとしても構わない。

 もうそれしか……それしか、麻亜子には考えられなかった。
 それ以外に、どうしていいか分からなかった。
 心すら、今は煩わしい。
 こんなにも苦しいのならば、悲しいのならば、感情などいらない。そう思うくらいに。
 それでもやらなければならない。麻亜子がやらなければ……一体誰がかつての日々を取り戻してくれるというのか。
 当たり前のようにあったあの日常は、最早麻亜子にしか取り戻せなかった。

 何も考えるな。機械になれ。もう、物思いに耽るのはここまでだ。
 決意しても尚、麻亜子の中にある何かが悲鳴を上げ、軋みを立てて痛みを訴えようとする。
 後悔しているのだろうか。こんなことになってしまったことを、今更、今更、今更……
 そう、今更だ。だから、こうやって方法を模索し、皆殺しにして願いを叶えて貰うという選択に行き着いた。

「……よし」

 それ以上黙っていれば、また何か考えてしまいそうな気がしてそれで締めくくることにした。
 今までだってそうだった。言葉は道化だ。
 何かを考えないようにするには、全てを遮り、喋り続けているのがいい。
 そうすれば、何も聞こえない。

「さぁて、行きましょうかね、無限の彼方へー! ……っとと、その前に持ち物の確認か。冒険する前の準備はRPGの常識だよねー」

 戦闘続きでデイパックの中身は久しく確認していない。
 それにしては戦利品が少ないのを懸念しつつ、麻亜子は鼻歌交じりに荷物を確認する。

「ふんふん、黒くて太くて硬いものと、先端が尖ってて硬いものと、勢い良く発射するやつか」

 誰かが盗み聞きしていれば間違いなくある種の誤解を招きそうな事を(本人は確信犯的に言っていたが)喋りながら、ボウガンの矢数はまだそれなりに残っていることに安堵する。
 元々大量に支給されていたのと、モッタイナイ精神の元拾えるものがあれば拾い集めていたので、矢の残りは36本。
 デザート・イーグルは強力無比ではあるものの残り弾数があまりにも少なすぎる。
 柏木耕一のような化け物相手でもない限り使わない方が無難だろう。
 となると、ボウガンで狙い撃ちしつつ近距離に入り込まれたらナイフで応戦するのが基本戦術となる。
 結局、新しい武器を手に入れるまではいつも通りか。

 制服のポケットにナイフを入れ、ボウガンを手に持ち、麻亜子は新たなる戦いへと赴く。

「……大丈夫、あたしはまだ、大丈夫。忘れてないから、だから、待ってて、さーりゃん、たかりゃん」

 その二人の名前が心に圧し掛かるのを無視して、麻亜子は家の玄関を開けた。

「さよなら」

     *     *     *

 麻亜子が往人と舞を発見したのは、それからすぐのことだった。
 雨に濡れた大気の中に浮かぶ、薄紅色の景色と風に運ばれてやってくる、焼け焦げる匂い。
 何かを燃やしているな、と判断した麻亜子はすぐにそちらに向かうことにした。
 まだ炎が燃え盛っているなら、人がいるのではないか。そう思って。

 この予測自体は正しかった。
 気配を殺しながら、慎重に足を進めた先には二人の男女がいた。
 何をやっているのか、雨が降っているというのに荷物の確認をし合っていた。
 恐らく、家に火をつける前に確認するのを怠っていたのだろう。

 間抜けだ、と息を漏らし、一思いに殺してやろうとボウガンを持ち上げる。
 犠牲者、第四号と五号だ。
 連射こそできないボウガンだが、音もなく一撃必殺の矢を放てるのは最大の利点。
 相方がいきなり倒れ、動かなくなれば間違いなくもう一人も動揺する。後はそこに矢を撃ち込めばいい。
 狙いをつけようと目を凝らし、対象を捉えようとした麻亜子だが……それが一つの物体を目にする結果になった。

「あれ……は……?」

 男が持ち上げた、見覚えのある扇子。見紛うはずがない。何故なら、あれは麻亜子が実際に使っていた、鉄扇なのだから。
 瞬間的に、麻亜子が記憶を手繰り寄せる。

 あれを持っていたのは誰だったか。
 学校でのいざこざがあったときに奪われたはず。
 誰に?
 たかりゃんの近くにいた、仲間っぽいツインテの女の子。
 そして、たかりゃんの近くにはさーりゃんもいた。
 逃げたあたし。
 追っていたたかりゃんとさーりゃん。
 燃え盛る家。
 その前で、あいつらの持ち物だった荷物を持って何か確認し合う二人組。

 事実が過去と繋ぎ合わさり、一つの推測を生み出す。
 まさか、たかりゃんとさーりゃんを殺したのは、あの、二人?
 状況証拠があまりにも揃いすぎていた。
 冷静だったはずの頭が、どんどん熱を帯びて思考を一元化させる。封じ込めていたはずの余計な思考が入り込む。

 あいつらが、あいつらが……殺した……

 『だが、逃げたのはアンタだ』

 あれはっ……あの時は……仕方なく……

 『アンタさえ逃げなきゃ、二人は死ぬことはなかったんだ』

 逃げてなんかない! 殺したのはあいつらだ!

 『そうだとしてもその要因を作ったのも、アンタ』

 違う! 違う違う違う!

 『さーりゃんとたかりゃんを殺したのは、アンタなんだよ。まーりゃん』

 違うっ……そんなこと、あるもんかぁっ!

「……っ!!!」
 流れ込んでくる声を黙らせるかの如く遮二無二ボウガンを振り上げ、半ばいい加減に狙いをつける麻亜子。
 それがいけなかった。
 気付かないはずだった男――国崎往人――が気配に気付き、相方の女――川澄舞――の手を引っ張り、ボウガンの射線から退いた。
 空しく外れた矢は、麻亜子の空回りする思いを示しているかのようで。

「何で避けるんだよっ、なんでっ、なんで、なんで……っ!」
 思い通りにいかないのを、苛立ち、駄々をこねる子供のように叫び、矢を再装填する麻亜子。
「当たってよっ! アンタ達が、アンタ達がいるからっ!」

 何に対して怒っているのかも自身ですら分からぬまま、再度舞の方へと向けて矢を発射する。
 だが先程と違い十分に集中を保っている舞は射線を読み切り、僅かに横に動き、二発目の矢も回避する。
 そのまま刀を構え、突進してくる舞の、予想以上のスピードに麻亜子は反応が遅れた。
 三度目の装填は許されない。ボウガン本体を刀の鍔で押し飛ばされ、高々と放物線を描いて麻亜子に後ろに落下する。

「……っ! どうして……! そうなんだよっ!」

 サバイバルナイフを抜くと、懐目掛けて斬りつけようとする麻亜子だが、冷静に一歩引きそれを刀で弾いた舞に阻まれる。
 めげずに幾度と無く振るうが、舞は元々夜の学校で剣を振るい、正体不明の魔物と対峙してきた、白兵戦における実力者でもあった。
 卑怯の女神とあだ名され、その神懸り的な知略と小柄を利用した運動能力を誇る麻亜子でも、その道の達人には及ばない。
 加えて、今の麻亜子からは冷静さも欠けていた。
 そもそも冷静であるなら今の時点で実力者に真っ向から勝負を挑むのは無策かつ無謀だと悟り、敵を出し抜く術を考えていたところだろう。
 それどころか当たらない攻撃にますます焦り、無闇矢鱈に攻撃を繰り返す始末であった。
 まるで、目の前の舞ではなく、その先の見えない何かを追い払っているかのように。

「あなた……?」
「五月蝿い! 黙れ! 喋るなっ! ここからいなくなれ!」

 様子がおかしいと気付いたのは、舞だけではなく、往人もだった。
 遮二無二攻撃を繰り返し、目の前を倒す事しか考えていないかのような行動。
 何かを否定するかのように大声を張り上げ、側面に回ってガバメントカスタムを構えている往人にも気付かない。
 明らかに精彩を欠きすぎている行動から、却って何か策ではないのかと疑わせるくらい、麻亜子の状態は異常だった。

「アンタ達のせいで、死んだんだろ!? さーりゃんとたかりゃんは!」
「さーりゃん……? あなた、まさか」

 その呼び名に聞き覚えのあった舞が少し動転し、僅かに動きが止まる。
 間隙をついて振るわれたナイフの刃が、舞の腕を浅く裂く。
 痺れるような痛みに顔を顰め、舞が大きく飛び退く。

「舞っ!」
「大丈夫、大したことない」

 叫ぶ往人を手で制し、任せて欲しいと視線で訴える。
 その瞳の色に説得され、往人は追撃していく麻亜子の姿を見る。

 あいつ……いや、今は舞に任せよう。下手に手を出すと、取戻しがつかなくなってしまうかもしれない。
 ガバメントカスタムはいつの間にか下がり、代わって、仕舞っていた風子のスペツナズナイフの柄を握る。
 頼む。上手くいくように、お前も力を貸してくれ。

 往人はそう願いながら、二人の姿を見つめることに集中した。
 願いの先では――川澄舞が、両手に刀を持ち直しながら、朝霧麻亜子に話しかける。

「……まーりゃん先輩、というのは、あなた?」
「……やっぱり、殺したんだ。そうだよ、あたしがまーりゃん。でもそんなのどうでもいいよ、さっさと死んでって、言ってるだろ!」

 再び振るわれる刃を、今度は動揺せずに受け止める。
 相手が分かった以上、舞にもう迷いはなかった。
 今の舞の命を繋いでくれた、まーりゃんの後輩の少年。
 頼む。無念と共に紡ぎだされた言葉が今も舞には重く圧し掛かっている。
 けれども、それに潰されるわけにはいかない。

 後を任されたのだから。それに応える。それが私の、信頼の証だから。

 力で薙ぎ倒そうとする麻亜子の刃を真正面から受けながら、舞が言葉を返す。

「殺してなんかいない。それに、私は貴明から後を任された……あなたを止めてほしい、って」
「な……嘘を……分かったような事を言うなよっ! 白々しい……事をっ!」
「――だったら、どうしてそんなに怯えているの?」
「……っ!?」

 驚いたように、麻亜子の目が見開かれる。思ってもみなかった一言に虚を突かれ、動きが止まる。
 舞はそれを隙と見、ナイフも弾いて戦力を奪おうとする。
 だが硬直は一瞬。正気を取り戻して身を引いた麻亜子の前を振り上げられた刀身が駆け抜ける。

「怯えて……? あたしに怖いものなんかあるもんか。仮にアンタが言ってた事が本当だとして、やることは変わらない。あたしが勝って取り戻すんだから、全部を」
「……何を、取り戻せるって言うの?」

 今度は、応えなかった。今度は無言。知らん振りを決め込むように言葉の追随を許さず、ナイフを振り込む。
 その居直りを、舞は許さない。今度は舞が踏み込み、当身するように麻亜子に突進する。
 同じ女性であるが、体格差は無視できない。力を抑えきれず、受け止めたはずの刀が徐々に押してくる。
 だが麻亜子は前蹴りで切り返し、若干バランスを崩した舞から即座に距離を取る。逃げるように。

「死んだ人は、戻ってこない。どんなに強く思っても、どんなに必死に切望したとしても……」
「知ってるよ……でも、でも! それでもあたしは信じるしかない! あたしが信じなきゃ、誰が取り戻してくれるって言うの!? 二人の居場所を!」

 戦いは、次第に白兵戦から舌戦へと変貌してゆく。
 無骨な刃物同士が火花を散らし、甲高い音を鳴らすのはなりを潜め、代わりに人間同士が織り成す感情の渦が場を支配していく。
 鍔迫り合いは大きく言葉がぶつかり合う瞬間。

 互いが互いを否定し合う。
 一方は頑なに自らの目標に拘泥し。
 一方は使命感と、信頼に応えるために。

「アンタは何も分かってないんだよ! 大切な人を失う哀しさが、あたしが想う気持ちが!
 さーりゃんとたかりゃんはこんなところで死ぬべき子たちじゃなかった!」
「貴女だけじゃない……! 私も、往人だって大切な人を亡くした! 何よりも大事にしたいひとを助けられなかった!
 どんなに苦しんで、苦しんで、辛くなっても絶対に守りたかったのに、出来なかった!」

 舞の中で、親友の姿が思い出される。
 どんなに辛いときでも、苦しいときでもそのひとがいたから頑張れた。立ち上がる事が出来た。
 ずっとずっと、守り通していきたかったのに。
 そうする事は叶わず、そればかりか仲間の死を呆然と見つめているだけで、生き恥を晒し。
 だが……

「貴明も、ささらもきっと同じだった! 助けたい人がいるはずなのに、どうしようもなくて、
 それでも逃げずに最後まで恥ずかしくなく生きようとして、それで死んでいってしまった!
 何が正しいのか、これでいいのかってろくに考える暇もなくて、やれることをやって死ぬしかなかった!
 佐祐理も、観鈴だって……!」

 舞が口にした観鈴、という名に様子を見ていた往人にも何か熱いものが腹の底から湧き出てくる。
 会えなくても、きっと観鈴は健気に笑い、人を一つにまとめようとしていたのかもしれない。
 逢いたい人に会えなくて、それでもまずやれることをやろうとして、それで犠牲となって、或いは庇って、或いは奪われるがままに。
 それは今の往人達も同じだった。
 今のこの生き方が正しいのか。
 ろくに考える暇もなく、それでも生きようとしていた殺し合いの犠牲者のように、懸命に生きていくしかなかった。

「だから、私達がその意思を継がなければいけない……どんなに悲しくても、苦しくても」
「……じゃあ、諦めろって言うの!? 大切なひとを殺されて、踏み躙られて、悔しくないの!?
 どんな手を使ってでも取り戻したいって思わないの!? アンタにとって一番大切なものって、その程度の価値なのかっ!」
「違う」

 舞ではなかった。全く別の方向から聞こえてきた往人の声に、麻亜子は戦闘中であることも忘れてそちらに振り向く。
 その先では往人が、激情を滾らせながら、しっかりとした真摯な目を麻亜子に向けていた。

「俺達は鳥なんだ。血を吐きながら、繰り返し繰り返し苦しみや悲しみ、辛さ、苦しさを乗り越えて飛ぶ鳥だ……!
 その先に救いがなくても、求めていたものが得られなくても、俺達は飛び続けて、空を目指すしかないんだ……!」
「……確かに、悔しい。憎くないわけない。踏み躙られて、どうでもいいわけなんかない。きっと一生忘れられない。
 でも、そうやって生きていくしかない! あの日を取り戻す力なんて、どんなものに縋っても、ないから……!」
「そんなこと……!」

 ない、とは言えなかった。言葉に出して否定することが出来なかった。
 既に知っているから。日常を、つい昨日まであったあの日を完全に取り戻すことなんて不可能だということを。
 けれども、もう麻亜子にはどうしようもなかった。
 どうやって空を飛べばいいのか、分からなかった。

「でも、他にどうしようもないんだ! どうしろって言うんだよ……! あたし、たかりゃんとさーりゃんに顔向けできないよ……!
 それだけじゃない、それまでに殺してきた人たちも……ここで止めちゃったら、無駄死にじゃんか……!
 何て言えばいいの? どうしたらいいの? あたしには、戻れる場所も、留まれる居場所も、進める所もない!
 なら、無理矢理にでも奪い返すしかないじゃないか! たかりゃんとさーりゃんに、死んでいった人たちに顔向けするにはそうするしかないんだ!
 だから、返してよ……あの二人の居場所を、返してよ!」

 考えることを、二人の言葉を考えることを拒絶し、一声叫ぶと麻亜子はナイフを真正面に突き立て、舞に突進する。
 防御は考えなかった。ただ倒せればいいと考えていた。
 自分でも正しいと思う答えを否定するには、暴力と恐怖で押し潰すしかなかった。

「――そんなの、間違ってる!」

 叫び返したのは舞だった。
 反論するための声ではなく、それは真に心から伝えるための声だった。
 裂帛と共に放たれた刃は、当に神速。
 麻亜子の目はそれを捉えられなかった。
 剣風が突き抜けたかと思えば、キンと小さな音を立ててナイフは宙に飛んでいた。
 麻亜子は敗北を悟る。
 これで完全に空手。
 デザート・イーグルはあるにはあるが、取り出す間に再び弾き飛ばされるのがオチだろう。
 それより、何より……自分は、泣いているのだから。

「……誰も彼もが救われる道なんてない。死んでしまった時点で、救われることも、赦してくれるはずなんてないんだからな……」
「それに、まーりゃんは手段と目的を履き違えてる。……自分が赦されたいがために、殺し続けようとしているだけ……
 私と一緒……自分が赦されたいだけのために、命を絶とうとした。そんなのじゃ、誰も覚えていてはくれないのに」

 同じ雰囲気を、舞は感じ取っていた。
 取ろうとした方法は違えど、自己満足がために行動していたのは同じに違いなかった。
 舞は往人がいたからこそ、これ以上の過ちを犯さずに済んだ。
 だから……というには早計かもしれなかったが、麻亜子にもそうなって欲しくなかった。
 まだ、彼女は生きているのだから。

「……でも、もうあたしは一人……それに、もう今更だよ……あたしは、たくさん人を殺して、どうしようも……」
「仲間なら、いる」

 舞が往人を見る。言われるまでもなく、往人はそれに従うつもりだった。
 まだ、自分の足で立って、自身で過酷を受け入れて、それでも歩こうとするなら。
 未だ燻る、熱情の残滓を抱えながら、往人は「ああ」と答えた。

「……いいの? あたしがいたら、殺人鬼の仲間だって、疑われるかもしれないよ……?」

 はらはらと涙を零しながら、確かめるように、けれども自身の負債には巻き込みたくないというように、躊躇いがちに視線を寄越す。
 だが、往人も既に一人を殺害し、舞も穿った見方をすれば、仲間を見殺しにしたと責められても仕方のない状況だった。
 この場にいる誰もが、誰かに責められ、罵られ、突き放される可能性を孕んでいる。
 それでもなお、前に進まねばならない。
 そうする義務があるのだから。

「なに、そのときはそのときだ。俺達も似たようなものだしな。
 ……お前が、逃げずに、死んでいった奴らの命を背負って血を吐きながら飛び続けるというのなら」

 言葉の一つ一つが、麻亜子の胸の中に深く染み込んで固まっていく。
 皆が孤独な罪を抱えている。
 だからこそ、人は人と触れ合い、その罪を力を合わせて、何とかしようとする。
 それでどうにもならなくても。
 暴力や恐怖で押し潰そうとする力の倫理は、どこかで破綻する。
 どこかで崩壊する。
 いつかはそれ以上のものに潰されてしまうから。
 故に、お互いがお互いを支え合わなくてはならないのだ。
 力の倫理に屈せず、生き抜くために。

「ほんとう……? あたし、また誰かの近くにいても……」
「うん、だから、安心して」

 雨の中、燃え盛っていた炎は消えようとしていた。
 その全てを、濡れたままのちっぽけな存在たちに託すようにして。
 戦闘のほとぼりが冷め、雨に濡れ冷たくなりつつある身体が、しかし一点だけ暖かく、温もりを放っているのを麻亜子は感じていた。

 ああ、本当は、こうしてもらいたかったのだ。
 誰かにお前のやっていることは間違っていると、頬を叩いてもらいたかったのだ。
 どうして――
 どうして、この思いをあの時、貴明とささらに会ったときに、抱かなかったのだろう。
 結局、逃げたツケが、自業自得が降りかかってきた。
 最初の最初から、もっと自分の声に耳を傾ければよかった。
 自分にやれることは何だったのかと、もう少しでも恥ずかしくない生き方を考えておけばよかった。
 本当の日常は、きっと自分の手の中にあったはずなのに。

 ……だから、生きなければならなかった。
 最後まで恥ずかしくない生き方を、やれることをやって死ぬしかなかった、二人の意思を継ぐために。

「――」

 ふっ、と。
 足腰から急激に力が抜け、自分の身体が崩れ落ちていく感触があった。
 同時に、雨の音が遠のき、意識が暗転していくのにも。
 何か口にしようとして、結局叶わぬまま、麻亜子は深い意識の底に沈んでいくことになった。

     *     *     *

「……大丈夫だ、気を失っているだけだろう」
「良かった……」

 ホッと胸を撫で下ろした舞を横目に、往人はどこか安心しきったように目を閉じて穏やかな吐息を立てている麻亜子を見る。
 恐らく、緊張の糸が切れたのだろう。
 言動から窺う限り、相当な無茶をしでかしてきたのだろう。
 服の間から除く細かい擦り傷、切り傷。
 精神的な苦痛だってあっただろう。
 ともかく、このままにしておいては風邪を引く可能性がある。

 当初は相談の結果、舞の仲間であったはずであり、惨劇も目撃していたはずの、今は忽然と姿を消した藤林椋という女の捜索にあたるつもりだった。
 舞が言うには大人しい印象の人物だったそうだが、ただ単に逃げただけとは思えない。
 何か考えあって戻ってこないのか、それとも……
 ともかく、事件に関しては第三者でしかない往人が結論を出すわけにもいかず、事の真相を究明すべく探し出して尋問するつもりだった。

 ……が、このような荷物を抱えていてはそうもいくまい。
 藤林椋の捜索はもう少し後回しにすることにして、今はこのまーりゃんをどこかで休ませてやることが優先事項だった。
 それに、まともな服を調達してやる必要がある。いくら何でもスクール水着というのはひどい。
 往人は男であったが、別にそれに欲情するほど変態ではないし、未練もない。
 というかそもそも同世代の女性に比べれば明らかに幼児体型である麻亜子にそのような感情を抱くことはありえなかったのだが。
 国崎往人はその意味で健全な男性であった。

「予定変更だ。まずはまた適当に民家を探すことにするか……こいつの新しい服も調達しないとな」

 気を失ったままの麻亜子を背負い、雨の中定まらぬ視界に目を細めながら方針変更を告げる。
 荷物の大半を任された舞であったが、なんという事はないというように平気な顔をして武器だらけのデイパックを背負っている。
 先程の戦闘でも麻亜子が半ば自棄になって攻めてきたとはいえ、それを互角以上に戦う舞の運動能力も相当なものである。
 整った顔と、そんな身体を有する舞の華奢な体つき。
 人は見かけによらないものだ、と往人は改めて思った。

「……?」

 じっと見ていた往人に首を傾げて「何?」と問いかけた舞だったが「なんでもない」というように向きを変えて往人は歩きだした。
 失言が多かった往人は余計なことは極力言わないようにすることにしていたのである。口は災いの元。

 雨は降りはじめたときと変わらず、小ぶりに、しかしひたすらに降り続いていた。
 夜が明けたとき、果たしてそこには青空が広がっているだろうか。
 空を見上げながら歩く往人は、そんなことを思った。




【時間:2日目午後20時00分頃】
【場所:G-1】


国崎往人
【所持品:フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬5発、パン人形、38口径ダブルアクション式拳銃(コルトガバメントカスタム)(残弾10/10) 予備弾薬57発ホローポイント弾11発、投げナイフ2本、スペツナズナイフの柄、支給品一式(少年、皐月のものを統合)】
【状況:強く生きることを決意。人形劇で誰かを笑わせてあげたいと考えている。まーりゃんの介抱、然る後に椋の捜索。マシンガンの男(七瀬彰)を探し出して殺害する】
【その他:左腕に文字を刻んだ。舞に対して親近感を抱いている(本人に自覚なし)】

川澄舞
【所持品:日本刀・支給品一式】
【状態:同志を探す。往人に付き従って行動。強く生きていたいと考えている。両手に多少怪我(治療済み。支障は全くない)、肩に浅い切り傷】
【その他:往人に対して強い親近感を抱いている】

その他:舞の持ち物(支給品に携帯食が十数個追加されています。)
(武器・道具類一覧)Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×17、スイッチ(未だ詳細不明)、トンカチ、カッターナイフ、SIG(P232)残弾数(2/7)、仕込み鉄扇、ワルサー P38(0/8)、フライパン、投げナイフ(残:2本)

朝霧麻亜子
【所持品1:デザート・イーグル .50AE(2/7)、ボウガン(34/36)、バタフライナイフ、支給品一式】
【所持品2:ささらサイズのスクール水着、芳野の支給品一式(パンと水を消費)】
【状態:鎖骨にひびが入っている可能性あり。往人・舞に同行。スク水の上に制服を着ている。気を失っている】
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