すれ違い




ゲーム開始からおよそ4時間と少々が経過した。
倉田 佐祐理(036)は殺人ゲームの始まった最初の地点である神社から、ひたすら北上を続けている。

美しい長髪とリボンには似つかない、ボロボロの衣服と擦り傷だらけの体。
背中には自分の身長とさほど変らない日本刀を背負っているところが
アンバランスな風体を醸し出している。

人との接触を出来るだけ避けるために、街道を避け、山沿いの道無き道を
選んだために、その歩調は遅く、疲労の通常の徒歩よりは遥かに多いはずだ。
いつ人に襲われるか、と思うと緊張感も張り詰めてしまい、尚更であろう。
途中、何度か疲労で座り込んでしまい、そのたびに弱気な自分が囁いてくる。

「逃げ回ったところでどうなるの?舞にも祐一さんにも会えないかもよ?」
「それだったら潔く、その切れ味の良さそうな刀で手首をすっと引いちゃえば?」

時には負けそうになるその声を、頭を強く振り追い払う。
大丈夫!舞なら、祐一さんなら、きっとこんなくだらないゲームにも
打ち勝てる強さがある。わたしは最後にそのお手伝いが出来ればいいのだ。

何度目かの気力を奮い起こし、立ち上がろうとした時だった。
……話し声が聞こえる……。
さっと木陰に隠れ、姿がこちらから見えないようにする。
何を話しているかは聞こえないが、どうやら男女1人ずつでの会話のようだ。
ーーー見つかるわけにはいかない!!
体がガクガクと振るえ、辺りの木々に伝わりそうになるのを必死でこらえる。

…5分?いや10分だろうか…?
しばらく隠れ続けていると、声の気配は無くなっていた。

ふぅ、と溜息を1つ吐き出すと、再びその場にへたり込んでしまう。
しばらく立ち上がれそうにないので、水を飲んで気持ちを落ち着かせ、
休憩がてら、現在地点とこれからの進路を地図やコンパスを頼りに決める。

このまま北上を続けると、中学校に出てしまうのか。
まだ人と接触すべきでは無い。特に今の疲労困憊した状態で
ゲームに乗るような人と接触したなら、逃げ切れる自信も無い。

…それなら山沿いに西へ進みつつ北西に向かい、池の方へ向かおう。
このままでは水も無くなってしまうから、もし飲めるようなら補充もしたい。
いつまでも人のいない方へ進むわけにも行かないが、
今は様子を見つつ、少しずつ人のいそうな場所へと向かおう。




『倉田 佐祐理(036)』
【時間:一日目、午後4時半ころ】
【場所:E−6】
【所持品:封印した菊一文字、支給品一式(さらに水を消費。残りわずか)】
【状態:疲労が徐々に蓄積しつつも冷静を保つ】
【行動:E−5を多少掠めてD−4へ向かう】
【備考:ニアピン接触が祐一と観鈴だった事には気付いていない】
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