「よし。こんなもんでいいだろ」 077番、那須宗一は現在氷川村のとある一軒家の中にいた。 仲間たちを探すため、そしてこのゲームに生き残るために使えそうなものを集めるためだ。 1時間ほど建物を物色した結果、彼は包丁、少し太めのロープ、ドライバーなどの工具一式が入ったツールセット、包帯・バンドエイド・マ●ロン(消毒液)などが入った救急箱を見つけた。 (使えそうなものは持てるだけ持っといて損はないしな) さて、とその場を後にしようとしたその時、家の中に誰かが入ってくる気配がした。 (誰だ?) すぐさまポケットから支給品のベレッタ トムキャットを取り出す。 もちろん、彼はゲームに乗る気など皆無である。あくまでこれを使うのは威嚇と防衛の時のみだ。 (――さあ、来やがれ) この瞬間から彼は普通の高校生(といっても知り合いたちからは正体バレバレだが)那須宗一から世界NO.1エージェント、NASTYBOYに姿を変えた。 キィ…と音をたて、部屋のドアがゆっくりと開いた。 「動くな。止まれ。 抵抗しなければ安全は保障する」 宗一は入ってきた相手にすぐさま銃を突き付けた。 入ってきたのは自分と同年代の少女だった。 「わっ。いきなり脅かさないでよ」 少女――031番、霧島佳乃は銃を突き付けられているのにもかかわらず、いつもどおりの調子で宗一に言った。 「大丈夫だよ。君を殺したりなんかしないからー」 「……お前、恐くないのか?」 「そりゃ恐いよ。でも抵抗しなければ殺さないんでしょ? それなら平気だよ」 (ああ、なるほど―――) まあ、恐怖心がないというのはこういう状況においては頼もしいものだ。そう思いながら宗一は銃を一旦下ろした。 「――私はお姉ちゃんや往人君たちを探していただけだよ」 「そうか。それはすまなかった」 しばらく佳乃の話を聞いた結果、宗一は彼女は敵ではないと判断し、彼女と行動を共にすることにした。 「それで何か役に立ちそうなものはないかなーと思ってこの家に入ったんだ。鍵開いてたし」 「悪いが、この家にある使えそうなものはほとんど俺が既に拝借してしまった」 「え? 本当?」 「ああ」 「うーん…それは困っちゃったな。 あ。でもまだ使えそうなものの1つや2つは残っているかも」 ちょっとそこで待ってて、と宗一に言うと佳乃は一度部屋を出た。 「お、おい。やれやれ、なんなんだあいつは…?」 しかし、どこか皐月やゆかりに似ているなと宗一は思った。 「あ。宗一君見て見て!」 「ん? どうした佳乃?」 冷蔵庫から拝借した牛乳パックを手に宗一は佳乃のもとへ行く。 そこには…… 「ほら。こんなものもあったよ」 「ぶっ――!」 思わず吹き出してしまった宗一。 それもそうだ。佳乃が持っていたものは――他でもなくコンドームだったのだから。 「主催した人たちも凄いねー。万一のためにこんなものも用意してあるなんて」 「い、いいから早くそれをもとの場所に戻しとけー!」 結局、役に立ちそうなものは他に見つからなかった。 「よし。暗くなる前に少し場所を変えるか。確か佳乃のお姉さんは医者だったよな?」 「うん。お姉ちゃんは凄いんだよ!」 「よし。じゃあ、医者が行きそうな場所に行くか。 ちょうどこの村には診療所があるみたいだからな。もしかしたらそこにいるかもしれない」 「うん」 宗一たちは診療所を目指し、家を後にした。 那須宗一 【持ち物:ベレッタ トムキャット(残弾7)、包丁、バッグ、ロープ(少し太め)、ツールセット、救急箱】 【状態:健康。皐月やエディたちを探す】 霧島佳乃 【持ち物:バッグ】 【状態:健康。聖や往人たちを探す】 【場所:I−06】 【時間:午後3時50分】 【備考:2人で行動して診療所へ】 - BACK