「ハァァァァァァァァァァ……!」 Xランクの力を解放した祐一は光り輝く6枚の翼を翻し、諒に身構える隙さえ与えずに極大魔法を放った。 エク ・ ス ・ ヒューム ・ ド 地水火風冷雷闇光滅撃 弱点もクソも無くあらゆる敵を葬る、必殺の全属性魔法だ。 八色の奔流が諒を襲う! ……だが。 パッシィィィィィィィッ!!! なんと! 諒は微動だにせず地水火風冷雷闇光滅撃を弾いた。 「フ……ハハハハハハハッ!!」 「なに……」 「知らなかったのか? 超地球人3の身体を覆うインペリアリック・オーラはあらゆる属性の魔法を……遮断する!」 諒はこの上なく得意げに自らの能力を語った。 「つまりッ! お前がいかに強力、いかに多彩な魔法を使おうともぉッ! 俺には通じないぃぃッ!!」 「……」 「ハハハハハハハハハハハハハハ…………ハッ!?」 諒の右手があるハズの場所に黒い暗黒が広がっていた。 「な、なんだコレは……」 諒は驚愕に満ちた表情で手首から先が無くなった右腕を見た。 「それは“無”だ」 「“無”っ? “無”だとっ!?」 そう、超地球人3のインペリアリック・オーラはあらゆる属性の魔法を遮断する―――ただ一つ、“無”属性魔法を除いて。 なぜならば、“無”属性魔法はあらゆる魔法を無効にするというインペリアリック・オーラの性質そのものを“無”くすからだ。 (は……ハッタリだっ!) 有史、先史、神話、旧神話、あらゆる時代を遡っても、“無”を制御し得た者は“魔人”ティーユ=ワズィーアただ一人。 そしてそのティーユ=ワズィーアも旧神との最後の戦いにおいて自らの無に飲み込まれて消えたとされている。 「ティーユ=ワズィーアでもない貴様が“無”を使いこなすなどとぉッ!」 誇り高き超地球人は残された左手に銀色のオーラを集中させ、あらゆる物質を粉砕する一撃を振り下ろさんとする。 祐一はスッ……と目を閉じ右手を掲げた。 「見るか―――虚無を」 イベント ・ ホライズン 事 象 深 淵 ―――――カッ。 「ウッギャアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!………………」 「アアアアアアアッッ!!!!………………」 「!!!!………………」 「………………」 「…………」 「……」 「」 「イベントホライズン」の虚無に呑まれ春日諒は消滅した。 彼は死んだのではない。存在自体を否定されこの宇宙に最初から“無”かったことになったのだ。 「ティーユ=ワズィーア……か。そんな名だったこともあったっけな……」 そう呟いた祐一の瞳には僅かに哀しみの色が浮かんでいた。 彼の秘められた過去世……その全てが語られる日は果たして来るのだろうか……。 「り……諒!」 「うぬぬぬぬ……どうすればいいんだ……!」 なお、何故この2人が「この宇宙に最初から“無”かったことになった」ハズの諒の敗北に動揺したのかは語り得ぬ事なので問うてはならない。 側近A(春日諒) 【消滅】 『相沢祐一(001)』 【時間:一日目12:06分頃】 【場所:島の上空】 【持ち物:世界そのもの。また彼自身も一つの世界である】 【状態:真唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年。背中に六枚の銀色の羽。何か良く解らないけど凄い鎧装着)】 - BACK