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林の中に逃げ込んだ七瀬彰は、後ろをちらりと見、 誰も追ってきていないのを確認すると力なくうなだれた。 撃たれた右腕が焼けるように痛み、全身から汗がにじみ出ている。 なんでこんな事になったのか。 痛みで意識が遠くなりそうになる頭を必死に振り 思い描くのは最愛の人の顔。 -美咲さんを守る。 このゲームのルールを聞いたときにはただそれしか浮かんでは来なかった。 見ているだけだった普段の生活。 最愛の人と、親友と、くだらないことで笑いあう日々。 それだけでも楽しかった、幸せだった。 だが、今自分のそばには誰もいない。 そして彼女のそばにも……。 「!?」 気付いた時には背後に人の気配。 霧島佳乃(031)がそこに立っていた。 何かに取り付かれているのかのように目の焦点はあっておらず、虚ろに彰を見下ろしていた。 そして次の瞬間、首に黄色い布が巻かれる。 勢いよく締め上げられるそれの痛みと苦しみに呼吸が出来ない。 (まずい!) 頭の中が真っ白になっていく。 気が遠くなりそうになりながらも、振り解こうと腕を暴れさせた。 彰の肘が佳乃のみぞおちを殴打する。 一瞬布を握る手から力が抜けるのを感じると、腐乱に肘を打ち続けた。 首から圧力が完全に抜け、佳乃は腹を押さえて倒れこむ。 間髪いれず振り返り、髪の毛を掴みながら崩れ落ちようとする身体を引っ張ると その顔面を思いっきり殴りつけた。 ブチブチッと言う音と共に左手には髪の毛だけが抜こり、佳乃の身体が吹き飛ばされる。 彰は迷わず佳乃の身体にまたがると、また一発二発と顔面を殴り続けた。 佳乃の顔が左右に揺れ、同時に口から鮮血が飛び散る。 何十発と殴ったのかもうわからない。 顔はどす黒く晴れ上がり、綺麗だった面影はどこにも残っていなかった。 佳乃の血で真っ赤に染まった拳を止める。 ゆっくりと辺りを見渡すと人の頭ほどの大きさをした大きな石。 荒ぶる息を押さえ、それを手に取り振り上げた。 それでも佳乃の表情に変化は無く、ただ虚空を見つめている。 ……渾身の力を込めて石は振り落とされた。 グシャと鈍い音が響き、佳乃の身体はピクピクと数秒痙攣すると、そのまま動かなくなった。 ……人を殺した。 湧き上がる吐き気を必死に押さえ込むと、知らぬうちに瞳から流れていた涙をぬぐう。 後悔している暇はない。 自分が立ち止まっている間にも最愛の人が自分と同じような目にあってるかもしれない。 ノロノロと力なく立ち上がると自身のデイバックを肩に下げる。 少し離れた草むらに佳乃のものであろうデイバックも発見し、迷わずそれを掴む。 中を見ると小さなアイスピックが出てきた。 腰とベルトの間にそれを入れ、ゆっくりと歩き出した。 彼の目は決意に染まっていた。 人が死のうとも、手にかけるのが自分であろうとも。 そして相手が親友であっても。 ただ愛する人を助けるため……。 この島においてその決意が、なんとも悲壮なものであることを彼はわかってはいなかった。 七瀬彰 【時間:一日目13:45】 【場所:E-3】 【持ち物:武器:アイスピック、自身と佳乃の支給品の入ったデイバック】 【状況:右腕を負傷】 霧島佳乃 【時間:一日目13:45】 【場所:E-3】 【持ち物:支給品一式は彰の手に】 【状況:死亡】 - BACK