SATSUKI −GUN道−




「ねぇ、あなたはタカくんをきずつける?」
湯浅皐月(113番)は突然目の前に現れた自分より1つ、2つほど歳下と思える少女、柚原このみ(115番)に銃を突きつけられた。

「…………」
しかし、皐月は答えようとはしない。このみの目をじっと睨みつけるような目で見ていた。
「ねぇ? どうしたの? 『はい』か『いいえ』、『Yes』か『No』でいいんだよ?」
「…………」
それでも答えない。

「あと5秒数えるうちに答えないとうっちゃうよ?」
「…………」
答えない
「ご〜……」
「…………」
「よ〜ん……」
「…………」
「さ〜ん……」

―――ガサッ…
「――!」

ガシッ!
「えっ!?」
一瞬の隙を突いて皐月はこのみの腕を掴み、銃を奪い取った。

「―――良い銃ね……少し借りるわよ」
そう言うと皐月はこのみの背後にある茂みに向かって1発発砲した。



パン!
「うっ!」


放たれた銃弾は茂みの中にいた何かに命中した。声を上げたのだから人間なのは確かだ。
茂みの中から現れたのは名倉友里(076番)だった。
右肩に命中したのか、左手で被弾した箇所を押さえている。

「…………今のはわざと急所を外した。次は眉間を狙う」
皐月は友里に再び銃口を向けた。
「選択肢は2つ。持っている武器を捨ててこの場を立ち去るか、ここで死ぬか……」
「くっ……」
ギリッと唇をかみ締めると友里はやむなく自分の支給品である金属製のヌンチャクを地面に置いた。

「覚えてなさい………」
ドラマやマンガとかで悪役がよく言うセリフを吐き捨てると友里は再び茂みの中に入って姿を消した。


「………………」
「え…え〜と………」
もうなにがなんだかさっぱりわからないこのみは皐月のことをただじーっと見ていた。

「……………ねえ」
「は…はいっ!?」

声をかけられたので思わず返事をする。
だが、皐月から感じる妙な威圧感――オーラとでもいうのか? それに圧倒されて声が裏返ってしまった。

「さっきの回答………私は貴女の言うその人のことは知らないし、このゲームに乗って人を殺すつもりはない……………」
「そ……そうでありますか…………」
このみの顔から大量の冷や汗が垂れる。
「これは返すわ……」
「は…はいっ! どうも……」
このみは皐月から渡された自分の銃を卒業証書を受け取るかのように慎重に受け取った。
――手が震えていた。

「………………」
また皐月は無言でこのみの目を見る。
「こ…今度はなんでありますか?」
まさか、さっき銃を突きつけられたことを怒っているのだろうか、とこのみは思った。

(いや……ちがうんだよお姉さん。あの時は少し錯乱していて………
いやその…実は今も別の意味で錯乱しているのでありますが〜……)
思わず頭の中でそんなことがぐるぐると繰り返され、先ほどよりも錯乱しそうになる。

が……次の瞬間、
「………………うっ」
皐月がその場で崩れ落ちた。


「え?」
またわけもわからず、しばらく倒れた皐月をじっと見ていたが、しばらくしてはっと我に返り、
「お…お姉さんっ! どうしたんでありますかー!? きゅ…救護班ーーー!」
などと言いながら慌てて皐月に駆け寄る始末だ。

――このみが皐月のバッグから変なキノコ――セイカクハンテンダケを見つけたのはそれからしばらくした後である。




柚原このみ
【時間:一日目午後十二時半頃】
【場所:F-02】
【持ち物:38口径ダブルアクション式拳銃 装弾数8/10+予備弾薬80発ホローポイント弾 11発使用、デイパック】
【状態:混乱。皐月を安全な場所に運ぶ 】

湯浅皐月
【時間:一日目午後十二時半頃】
【場所:F-02】
【持ち物:セイカクハンテンダケ(×2)、デイパック】
【状態:セイカクハンテンダケのせいでクールになっていた。現在気絶中】

名倉友里
【時間:一日目午後十二時半頃】
【場所:F-02(逃亡)】
【持ち物:デイパック】
【状態:右肩負傷】

【その他】
・ヌンチャク(金属製)はこのみが回収
-


BACK