診療所にて




「ここは・・・診療所みたいですね」
開始された灯台から、道なりに歩く事ほどしばらく。
建物の裏手に回り、古河早苗はとりあえず休息を取る事にする。
ふぅ・・・と一息落ち着いたところで、涙がじわっと溢れてくる。
秋生さん、渚、朋也さん、伊吹先生と風子ちゃん、春原さん、芽衣ちゃん・・・。
他にもたまに朋也さんから聞く名前がちらほらと見えた。
こんなにたくさんの人がこの島で殺し合いをするなんて。
悲壮と絶望の入り混じった感情に支配され、早苗は体の震えが収まらない。
やらなければならないだろうか?生き残りをかけた戦いを。
「と言っても、このハリセンで何が出来るのでしょうか?」
独り言をつぶやき、力なくうなだれる。
1人に1つ支給されるランダムアイテム、早苗のそれはハリセンだった。
よくお笑い番組で見かけるようなあれである。
ハリセンでペチっと自分の頭を叩き、気合を入れなおす。
「弱気になってはダメですよね、秋生さん。渚を、朋也さんを、みんなを守るために、
 わたしはいつでも強くいなければ…!」
パンパンと頬を叩き、気力を奮い起こす。

ざ・・・ざ・・・ざ・・・
……!? 何か音がする。人の足音だろうか?
建物の影に隠れ、様子を見る。念のためにハリセンでいつでも殴りかかれるように構える。
武器としての力は無いだろうが、無いよりはマシだ。
ざ・・・ざ・・・ざ・・・
こちらに近づいてきているのだろう、段々音が大きくなる。
ざ・・・ざ・・・ざ・・・
影が見えた。
もう少し…もう少し引きつけて…勇気を振り絞って…
ガクガク震える手を抓り、ぎゅっとハリセンを握り締める。
ざ・・・ざ・・・
今だ…っ!!

「動かないでください!」
声が裏返りながらも、大声を上げて威嚇する。
「いやぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっっ!!」
相手は悲鳴を上げ、ガクっと力尽きる。
「え…!?」
その悲鳴の声の主には覚えがある!! いや、間違えようがない…。
「渚!! 渚なんですね!!」

一時間ほど経っただろうか。渚がようやく目を覚ます。
「あ…お母さんです」
ぼんやりと辺りを見渡す。まだ意識は朦朧としているらしい。
「渚、ごめんなさい。渚だと気付かなくて驚かしてしまいました」
「お母さん、ここはどこですかっ?」
「あのウサギのお人形さんは、ここが沖木島という場所だと言っていました。
 ですが、殺し合いをさせるくらいですから、おそらくは無人島なのでしょう」
「…殺し合い、ですか」
最愛の娘をぎゅっと抱きしめ、早苗は力強く諭す。
「…渚に人を殺すような真似はさせません。そして渚を殺させるような事もさせません…!!」
「お母さん、少し痛いですっ」
娘の非難の声も構わず、力強く抱きしめ続ける。
すると安心したのだろうか、渚の体が静かに振るえ、嗚咽の声が聞こえだす。
…ここで渚と会えた事がせめてもの救い。渚だけでもわたしの手で守り抜こう。
まずは、この診療所で隠れられるかどうかを調べる。
大丈夫そうなら、ここを拠点にして、少しずつ足を伸ばそう。
秋生さんも朋也さんもしっかりしてるから、そう簡単に殺されてしまう事はない。
むしろ心配なのはわたしたちの方だ。
まずは生き抜く事を考えよう。そうすればおのずと道は開けるはずだ…!!




『古河 早苗(094)』
【時間:午後4時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:ハリセン、基本所持品】
【状態:冷静、診療所を調べる】

『古河 渚(095)』
【時間:午後4時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:次の書き手さんにお任せします】
【状態:安堵、若干の精神疲労】 
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