乙女と医者




七瀬留美(079)は悩んでいた。
自分はゲームに乗るべきなのか、それとも乗らないべきなのかで。
――それだけではなく、彼女はどちらも自信がなかった。

(折原や瑞佳たちを殺せるわけないじゃない……
でも、このゲームに乗らずにみんなで島を脱出する方法も思いつかない……………)
こんな自分に少し腹が立った。
覚悟を決めてどちらかにスパッと決められはしないだろうか?

「はあ…こんな時に限ってなんて優柔不断になっているんだろう私…………」
自分自身に呆れてしまう。
そんな時だった。


「そこの君。少しいいかな?」
ふいに女性の声がした。
「誰!?」
しまった、と思いすぐさま支給品のP−90を構えて振り替える。
そこにいたのは霧島聖(032)だった。
「ああ。待ちたまえ。私は人を探しているだけだ。君に危害を加える気はない」
それに人を傷つける医者など医者ではないしな、と付け加え両手をあげる。

「悪いけど私はこの島に来てあなた以外の人とは出会っていないわ」
「そうか。それは失礼した。
どうやらこの付近にはいないようだな……他をあたるとしよう。
君。もし霧島佳乃という子に出会ったら姉が探していると伝えてくれないか?」
「………出会えたらね」
「すまない。助かる」
そう言うと聖はその場から去っていった。



「妹さんを探しているのか……この島思ったよりも広いから大変そうだな………」
聖が去った後、また1人残された留美は空を見ながら呟いた。

――じきに夕方になる。暗くなる前に安全な場所へ避難したほうがいいだろう。
(―――とりあえず今は生き残ることが大事よね?)
ゲームに乗る・乗らないは、その後でいいかと判断すると留美もその場を後にした。




 七瀬留美
 【時間:1日目午後3時半過ぎ】
 【場所:C−05】
 【所持品:P−90(残弾50)、支給品一式】
 【状態:安全な場所へ避難中。ゲームに乗るか・乗らないか悩んでいる】

 霧島聖
 【時間:1日目午後3時半過ぎ】
 【場所:C−05(移動)】
 【所持品:支給品一式】
 【状態:佳乃を探す。ゲームに乗る気、戦う気は皆無】
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