ツキ




「やれやれだねエ…」
エディ(010)はため息をつきながら目の前の大量のパンをどう処理するか思案していた。
説明しよう。事の始まりは三十分前―――

「コイツは…ちっとデカすぎるナ」
エディは自分に渡された他人より一回りも大きなデイパックを苦労しながら運ぶ。ジッパーはキツキツで壊れかねないほどであった。
「これだけ大きいのなら、きっと並み以上の武器が入ってるに違いないナ」
このゲームにおいて、どんな行動をとろうが強力な武器があるに越したことはない。が、一応身の安全のため出発地点から離れた場所で開けることにした。
「どっこいしょ…まあここらでいいだろ」
周囲を見回し、安全を確認する。
「そら開帳ダ…?」
中からぼとぼととこぼれ落ちてきたのはエディが想像したような未知の兵器ではなく、「古河パン」と銘打たれた大量のパンだった。
「は、ハハハ…」
こりゃいくらなんでも、ヒキが悪すぎだろ、ソウイチ―――
エディは遠い場所にいる友人を思いながらため息をついた。

そして今に至る。
「しかし、これホントにどうするかネェ…」


しげしげとパンの入ったデイパックを見つめる。と、エディはある紙切れがあるのに気づいた。
「何だコレ?」
説明書、と書かれてあった。

〜使用法、古河パンver.1,00〜
強い衝撃を与えると白い粉塵(人体には無害)が舞い散ります。
食べられますが、味は保障できません。
くしゃみに注意!

「………」
頭を抱えた。
食い物じゃねえのかヨ。いや、食べられるとは書いてあるんだけどサ。胡散臭さバリバリじゃン?いや、それよりどう使うかだ。煙幕…には使えそうだが、殺傷力は皆無だ。喉にでも詰めて窒息させるか?
そんなことを本気で考えていると遠くからがさがさっ、という物音がした。
「…! 誰ダ!」
まずい。今のオレっちには役立たずの粉塵パンしかない。最悪、死――
そこまで考えて、ぶんぶんと頭を振る。冗談じゃない。死んでたまるか。
エディは両手にパンを構えた。


しかし、そこに現れたのは幸運にもマーダーではなかった。
「…あんた、何やっとんのや」
そこにいたのは、呆れ顔の保科智子(096)だった。




『エディ(010)』
【時間:1日目午前11時ごろ】
【場所:C−2、森林帯】
【所持品:支給品一式、大量の古河パン(約30個ほど)】
【状態:健康、若干興奮気味】

『保科智子(096)』
【時間:1日目午前11時ごろ】
【場所:C−2、森林帯】
【所持品:支給品一式、武器は不明】
【状態:健康】
【備考:取り敢えず今のところ戦意はなし】
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