何が正義か知らないが




霧島聖(32)は、無学寺を最後に出発した。
(さっきの兎の説明を聞く限り……)
そして、多少離れた木の陰に隠れて待っていた。
(私が解放されたのが11時53分……)
あのスタート地点が爆発するのを。
(部屋まで普通に歩いて約2分。ドアを閉めて、デイパックを取り出すのに約1分)
もうすぐ……か。
最後に開放する時間から爆発までの時間が短すぎる。
参加者を爆発で殺すのは恐らく無効は本意ではない筈だ。
最後の者が逃げ切れないほどの大規模な爆発を起こすことは無いだろう。
そうなれば焼け跡に何か残るかもしれない。
(これで私が粉微塵になるような爆発だったら笑い種だな……)
ドッ……ゴォォォォォン…………
後ろから爆音が聞こえる。
自分の隠れている木を吹き飛ばすような爆発でもなかったようだ。
ちょっとほっとしながら爆発の余韻が収まるのを待って寺の方へ行く。
寺は崩れ落ち、煙を燻らせていた。
破片や材木は結構遠くまで飛んでいる。
下手に安定保っているよりかは崩れ去った今の方が安全だろう。
(ふむ……素手で触れるものではないな……)
先程デイパックの中は全てチェックした。
彼女に支給されたランダムアイテムは厚手の手袋だった。
その五指の上に鉄の爪の付いた。
(まさか主催者もこんな使い方をされるとは思わなかっただろうな……)
彼女はそれを嵌めて、下に何か在りそうな所を探す。





「やはり、そう都合良くは見付からんか……」
額に浮き出る汗をぬぐってひとりごちる。
「まぁ、あまりゆっくりもしていられないか」
焼け跡から抜け出て、道なりに歩き出す。
(佳乃を探さなければ……)
佳乃がこのゲームを一人で生き残るのは無理だろう。
早く合流して守らなければ。
誰かと行動出来ていればいいのだが。
(何が正義は分からんが……)
「少なくともこんなゲームが正義とは思えない。どうにか脱出する手立てを見つけよう」
声に出して決意を固め、妹を探して彼女は歩き出す。




霧島聖
【時間:午後一時半頃】
【場所:E-08の道の上】
【持ち物:デイパック、ベアークロー(ランダムアイテム)】
【状態:妹を探して歩き出す。島からの脱出を画策】
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