エリアF-03、スタート地点の一つであるG-03の分校から北へ行った場所。 19番柏木耕一が道から外れた人目のつかない場所にいた。 「無理か」 何度気合を入れても、体の奥に眠る鬼の力を呼び覚ませない。 「あいつらが言っていた通りか」 (手や肉体の一部すら変化なしはきついな) それでも一般人に比べれば身体能力は補正が効いて高い方なのだが、バトルロワイアルにおいては決して有利な条件ではない。 知恵と支給されたアイテム、そして運次第でいくらでも覆す事は可能なのだから。 「これで諦めてたまるか。はやく千鶴さん達と合流しないと」 (こうしてる間にも生き残りをかけてゲームに乗った参加者が動いてるに違いない…… 力が殺がれた楓ちゃんに初音ちゃん、千鶴さんや梓だって絶対に無事とは言い切れない) 「くそっ、せめてスタート場所が同じだったら良かったのに」 「へ、変態ー!!!」 突然、甲高い悲鳴が沸きあがった。 声のした方には、それと共に背中を見せ一目散に走りさっていく少女の姿。 「しまった!」 (わざわざこのために道を外れたのに) 耕一は後悔した。 なぜなら、彼は万が一鬼の姿になれた時のために服を脱いでいたからだ。 (能力が劣化されてるとはいえ、力は落とされていても鬼の姿だけになれる可能性もある) 鬼の姿になればよくてパンツ一丁かズボンが多少上に残る程度、他の服はビリビリに破れてしまう。 当然、ここには替えの服なんてない。 そう考えすぎたのがアダになった。 急いで最低限の服を着込むと耕一は誤解を解くために少女の逃げていった方へと走った。 (と、取り合えず、何とかして誤解を解かないと千鶴さん達と合流以前のまずい事態に) 誤解が広まれば最悪、変質者としてゲームに乗ってない参加者からすらも危険人物として付け狙われる可能性がある。 それで死んだなんて結末がくるのは耕一も真っ平ごめん。 (目だって他のゲームに乗ったやつらに見つからないいいが…… 早めに誤解を解かないまずいな) 一抹の不安を抱えながら気落ちした耕一は少女を追いかけていった。 (あぁ〜、どうしよう、いきなりだったもんだから声出しちゃったじゃないのよ) 一方、耕一の裸体を見て走り去った少女は、71番の歩くガセネタ長岡志保。 この少女に見られたのは耕一にとって今大会中最大の不幸に間違いない。 かくして一人の男の命と名誉を駆けた鬼ごっこが始まった。 19:柏木耕一 【時間:一日目正午】 【場所:F-03】 【持ち物:不明】 【状態:少女(長岡志保)を追跡中】 71:長岡志保 【時間:一日目正午】 【場所:F-03】 【持ち物:不明】 【状態:男(耕一)のいた場所から逃げる】 - BACK