狂愛




「待ってろ愛佳!」
森に囲まれた湖で河野貴明は叫んだ。
愛する者を守るために彼は走り抜けていく。
(こうしてはいられねぇ! はやく……はやく愛佳を)
一刻でもはやく彼女を探さねばならぬ、せめて街の所までいけば人は集まりやすいはず。
普段の彼ならもう少し冷静に考える所だったが、今の彼は焦燥感に捕われていた。
「絶対に俺がッ……「パン」
ドサリ。
貴明の身体が倒れる。
額からドクドクと真っ赤な血が流れて辺りに赤い池を作っていく。


「上手くいったわね」
そことは遠く離れた場所の木の上に一人の女性がいた。
「思った以上に扱いやすいわ、これ」
カチャリ、と銃を下ろす。
まだ仕留めた獲物の側には行かない。
自分が一番最初にスタートできたのは不幸中の幸運だった。
所持品を奪いにいくのは、このスタート地点から出てくる参加者をあらかた始末し終えてからだ。
「この私の手が汚れても。
栞、あなただけは必ず生き延びさせて見せる」




42 河野貴明死亡
【時間:一日目正午頃】
【場所:D-04】
【持ち物:支給品一式ランダムアイテム不明】
【状態:死体】

99 美坂香里
【時間:一日目正午頃】
【場所:D-04】
【持ち物:Remington Model 700Police装着数4 残弾数51、支給品一式】
【状態:スタート地点からおよそ800m離れた位置の木の上で待機】
【その他:D04から出てくる参加者の中で仕留めれそうな者を狙撃。その後安全を確認して死体を回収。栞を生き残らせる。】
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