「―――結構歩いたな……」 相沢祐一(001)は地図に目を落としながら呟いた。 彼のスタート地点は最南東の琴ヶ崎灯台。出発点がこの島でも一箇所しかない灯台だったため、現在位置の把握は容易であった。 だが、いつまでも此処には留まって入られない。 仮にゲームに乗った者がこの灯台に仕掛けてきたら、完全に袋小路だ。 よって、早々に荷物を抱えてこの場を離れたのだ。 そして、ある程度灯台からも距離を取った祐一は、見つかり難い近くの木の幹に腰を下ろした。 (とりあえず、ゲームに乗ってない奴との合流だな) 祐一の行動方針は、一先ず反主催者側との合流だ。 名簿を見る限り、祐一が雪の街に引っ越してきて出来た知人は全て揃っているといえる。 その中で誰がゲームに乗る可能性があるのかは、さっぱり予想できない。 祐一も彼女達のことは信用しているし、信頼もしている。 だが、状況がそれを許さないだろう。警戒も無しに迂闊に近寄る愚考はすべきではない。 勿論、彼女達がゲームに乗らず、合流できることは願ってはいるが。 そして、いけ好かない主催者の兎が言っていた人間とは思えない力。 彼には一つだけ心当たりがあった。 (舞の魔物も異能ってことでカウントされるのか……? ともかく制限されているとはいえ、多少は使えるってことだよな。 あんなのがゴロゴロいんのかよ。仲間に出来れば心強いんだけどなぁ) 異能の力を持つ者がゲームに乗ったら目も当てられない。 舞のような一見大人しそうな少女が保有しているのだ。外見は当てにはできないだろう。 このゲームの危うさに、祐一は早くも嘆息する。 ある程度考えを締めたら、今度は支給品の確認をするためにバックを開く。 「―――け、拳銃……。リボルバーってヤツだよな。本物、なんだろうな……」 恐る恐る拳銃を手にとって眺める。 銃弾は拳銃に込められている六発限りだ。 初めて手にする鉄の凶器に少し物怖じするが、この異常なゲームでは何よりも心強い。慎重に腰にさした。 (よしっ。まずは合流だ。基本的に集団で行動している奴はゲームには乗ってないと考えるべきだな。 人が集まる場所といえば移住区だけど、乗った奴まで引き寄せそうだからな) 祐一は地図を覗き込みながら思考する。 現在地はG−9。行き先の候補としては、北の寺か、西の神社。 実際どちらでもよかったが、考えてしまうと悩んでしまう。 さて、どうするかと決めかねていたが、ある意味現状を好転すべきことが起こる。 考えを遮るように、響く甲高い声。 「―――っ!?」 祐一は肩を一度震わせ、立ち上がる。 間違えない。悲鳴だ。それも近い。 それを意味するところは、乗った奴が最低一人はいるということだ。 このまま、無闇に出て行けば、当然自分も的にされる可能性もある。 襲われている人物が善人であったとしても、安全に仲間集めをするならば、ここは引くべきではないか。 そうだ。仮にマーダーがいてもいなくても、あれだけの悲鳴だ。第三者を引き寄せても不思議ではない。 ―――非情になれ相沢祐一。 危険を冒してまで助ける必要があるのか? まずは、信頼できる複数の同士を見つけるのが優先だ。 単身乗り込むのはあまりにも無謀であり、自分の命を危険に晒すだけだ。 介入すべきではない。接触すべきではない。残念だが、悲鳴を上げた人は運が悪かったと思ってもらい、自身は離れようと――― 「―――できるワケねぇだろがっ!!」 だが、それでもだ。 彼は理性に抗い、荷物を畳んで悲鳴が聞こえた方向へとヤケクソ気味に走り出した。 結局の所、相沢祐一はお人好しなのだ。 『相沢祐一(001)』 【時間:1日目午後1時過ぎ】 【場所:G−09】 【所持品:S&W M19(銃弾六発)他支給品一式】 【状態:普通。悲鳴を上げた人物の援護】 【その他:祐一編1話】 - BACK