晴子や往人と離れ離れにされた観鈴は、草木生い茂る森の中でバックの中を漁っていた。 なにはともあれ、食料である。 できればドロリ濃厚ピーチが支給されてるなんていいな。 と前向きに考え、一人ぼっちの寂しさを紛らわそうとする。 ―――きっと待ってればお母さんや往人さんが助けにきてくれるはず。 そうすれば三人で脱出しよう。 この絶望的とも言える状況下でか弱き少女の心は強くあろうとしていた。 「これなんだろう……?」 「砂糖かな? お塩かな? 小麦粉かな?」 そういいつつバックの中から取り出したのは彼女に支給されたアイテムである謎の白い粉。 「も、もしかしたら危ない粉かな?」 ドラマに出てくる刑事さんがペロリと粉を舐めるシーンが観鈴の頭の中で描かれる。 「ドキドキ……」 ちょっと舐めるくらいなら大丈夫だろう。 そんな気持ちで粉を指につけようとした時、森に一刃の風が吹いた。 ―――くしゅん!! と辺りに音が響いた。 「うう、全身真っ白けになっちゃったよ……」 風に運ばれた粉が観鈴の鼻へと入り、後はご覧の通りと言う訳です。 「でも、無味無臭だし、危ない粉でもなさそう……。小麦粉かな?」 目に入った粉で涙を流し、口に入った粉でげほげほ言いながら観鈴は身体についた粉をパンパンと払い落としていく。 「いい物だったらお母さんや往人さんの役に立てたのに……」 涙目でぐしゅぐしゅと言いながら、観鈴は粉をバッグの中へと仕舞い直した。 その奥にあるイスラム語で文字が書かれた紙には気付かずに。 「これから、どうしよう……」 25神尾観鈴 【時間:1日目正午過ぎ】 【場所:H-04】 【持ち物:炭疽菌@毒性激高 他支給品一式】 【状況:皮膚炭疽 肺炭疽 腸炭疽 感染一日目】 【その他:炭疽菌は無味無臭です】 - BACK