無題




 沢渡 真琴
 【時間:一日目12:00頃】
 【場所:スタート近く】
 【持ち物:防弾チョッキ、32徳サバイバルナイフ、水・食料一日分】
 【状況:死亡】

沢渡真琴、死亡。

彼女は最初から最後までなんだかよく分からなかった。
ただ突如背後から襲われ首を折られる音がした。死んだ。即死である。

その背後から襲った娘は、その少女だった死体に何か呪文のようなものを唱える。
しかし何も起きない。
だからその少女の死体を何度も殴打しながらその呪文を小声で唱えた。
そして、何度かそれをやると、その娘が一匹の狐の死体に変わった。
「ふー、なんとか私でもできた・・・やっぱり魔法や妖術は苦手なのよね」
娘はその狐をつるし上げ、首に縄をかけた。手馴れている。

彼女は姉から魔法や妖術の解除の呪文だけは教わってた。
いや、彼女が出来る魔法らしきものはこの簡単な呪文解除ぐらいだった。
彼女は格闘家である。自然の中の戦いは手馴れているが、
魔法は出来ない。できるのはこの誰にでもできる『魔法解除』の呪だけだった。

「あとはさ、これをなめさないといけないけど・・・そこまでやってる暇はないわね」
狐の皮は暖かい。しかもこいつは養殖用の狐で水瀬家にいたときから風呂に
よく入れられていたから寄生虫の心配もない。

 「狐、獲ったど────────────ってやりたいけど、今は無理ね。」


 「さーてと」
 その少女は死んだ狐を縄で縛り付けると、首輪に向かって何か話し始めた。

  少女:「詠美ー、どお?」
     すると、首輪から声が聞こえた。
首輪の声:「ふみゅ!まだ話さないでよぅ!」

  少女:「いーじゃん。どうせ私は今回の主役なんだからさぁ」
首輪の声:「ばきゅう!綾香さんまだ早いですの」

 ───そう、その少女の名前は、来栖川綾香。
    来栖川財閥の社長令嬢にして、今は来栖川工業の副社長になっていた。


  綾香:「誰が資金援助してると思ってるのよ。私はそこの副社長よ?
      あんた等だって私の力が無ければこみパ組だってこの戦いに参加させられる所だったんだからね」
首輪の声:「うりゅりゅ・・・そういう意味ではたすかりましたですの」


そして、其の首輪から男の声がした。
「持ち物はどうですか?綾香さん」
「だいじょーぶ!言うとおりの物がちゃんと入ってるわよ久瀬君」
「そりゃ僕の仕事ですからね」
その男は控えめではあるが自慢げな声で言った。




「にしてもわざわざ、綾香さん自らこの戦いに参加しなくてもねえ」
 首輪の向こうの久瀬は苦笑した。
「私の父に政治資金、軍部にこのバトロアの開催費を渡すからにこのバトロワを開催してくれ、
 そして自分を参加させろと言われた時はびっくりしましたよ。普通自分から参加させろなんて人はいませんから」

「あーこりゃ単なる人気取りよ。」と綾香は静かに微笑する。
「この来栖川綾香自らがバトルロワイヤルに参加することで、まず私の徴兵は免除されるでしょ?
 そして戦いで勝利者としてマスコミに載れば戦地に行く事もなくなるし、戦わずに英雄扱いって訳。」
「軍部も今回のバトロワやりたがってたようですし、それでたまたまこのような形で出来たんですが・・・」

 戦争は始まっていたが今日本は劣勢にたたされており、軍部も資金に困っていたところに
綾香がこのような形で志願したのである。今ではマスコミが来栖川財閥の令嬢二人が国の為に自らバトロアに
参加したと報道している頃だろう。

「ちゃんと佐祐理も殺すから心配しないでいいわ。倉田代議士の娘も参加させないとさ。
 バレちゃうじゃん?それに・・・久瀬君・・・アンタ、あいつの体ほしいでしょ?」
「え?」
「だからちゃんと・・・倉田代議士の娘だけは綺麗に殺してあげる♪あとで死姦でもなんでもしな♪」
 
「・・・・・恐ろしい人ですね・・・」
「しゃーないやん。珊瑚とかも少々出すぎてるし、これは実は他のジャマな奴の粛清も兼ねてるのよ」

 そういうと、綾香は自分の首についていた首輪を自分で外した。
綾香:「わかった?今回の主催者は私。おk?」

───3回目にして起きてしまった。バトロアに起きてはならない、『例外』。




 来栖川 綾香
 【時間:一日目12:00頃】
 【場所:スタート近く】
 【持ち物:所持品不明だがかばんに入る量の彼女が望んだ物品は全て入っている。】
 【状況:むちゃ元気】
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